企業が大きく売上げを拡大していくためには、新規開拓営業は不可欠です。「人手が足りない……」「新規開拓営業は効率が悪い……」などの理由で新規開拓が後回しにされるケースもありますが、新規顧客を獲得できないことには、企業活動の維持も難しくなってしまう可能性もあります。
また、新規開拓営業においてはどうしてもテクニックやスキルが属人的になりがちという側面があります。組織として新規開拓を行っていくためのノウハウの落とし込みも重要です。
今回は、新規開拓営業の重要性をお伝えした上で、新規開拓営業の中でも最も難しい顧客のアポ獲得の成功率を高めるポイントについて紹介します。
新規開拓営業とは
新規開拓営業とは、これまで取引実績のない見込み客に対して営業活動を行うことです。BtoBの場合は、見込み客の担当者や決裁者に対して営業活動を行うのが一般的です。
「新規顧客の開拓には、既存顧客への営業活動と比べ5倍の費用がかかる」と言われることから分かる通り、とても大きな負荷がかかります。しかしながら、将来的に大きく売上げを拡大させるためには、継続的に新規開拓を行っていくことが不可欠です。
BtoBの新規開拓の場合には、大きく分けて以下の4つのステップで実施します。
- ターゲットの選定(業種や所在地、企業規模などからセグメントを行う)
- 営業アプローチ手法の選択(テレアポ、飛び込み営業、Webマーケティングなど)
- 見込み客に案内する資料やトークスクリプトを準備する
- 見込み客に営業アプローチを行う
新規開拓営業の成約数は、アプローチ数を上げることと商談・成約率を上げることにより高めることができます。そのため、アプローチの効果を測定する際には、この2つの指標を見て改善点を見つけることが重要です。
なぜ新規開拓営業が不可欠なのか?
企業の売上げは「新規顧客からの売上げ+既存顧客からの売上げ」で成り立っています。売り切りのビジネスではない限り、売上げの大部分を占めるのは既存顧客からの売上げであることが多いでしょう。しかし、既存顧客の売上げを拡大するためには定期的にアップセルやクロスセルを行い、さらには離反を防ぐ必要もあります。
既存顧客は以下の要因により離反してしまう可能性があります。
- 担当者の対応力への不満
- 商品や価格に対する不満
- 競合他社からのアプローチ
サポートや商品・サービスの改善により、顧客の離反を最大限防ぐことはできますが、離反率を0%にするためには、大きなリソースと労力が必要になり現実的にはかなり難しいです。そして、不況による市場規模の縮小、規制緩和やグローバル化による競争の激化などの事情により既存顧客の維持は困難さを増しています。
既存顧客が離反してしまう中、新規顧客の獲得がなければ売上げが減少してしまう可能性の方が高いといえるでしょう。売上げを増やして企業が発展するためには、離反顧客以上の新規顧客を獲得し、その新規顧客をリピート客(既存顧客)に育てていく必要があります。
新規開拓営業の手法
(出典:https://webtan.impress.co.jp/n/2018/07/31/30058)
新規開拓営業で売上げをあげていくためにはどのような手法があるのでしょうか?具体的にどのような営業手法が、新規開拓として用いられているかについて解説します。
飛び込み営業
「新規開拓」という言葉から飛び込み営業をイメージされる方も多いと思います。「足で稼ぐ」「体育会系」「非効率」といったネガティブな印象を持たれがちな飛び込み営業ですが、飛び込み営業は多くの営業マンが営業手法として使っているのも事実です。
特にBtoB営業の場合、最低でも顧客の受付スタッフには話せる可能性が高く、担当者への取次に成功した場合には、担当者本人と直接話すことができます。オフィス街やオフィスビルなどでは、狭い範囲で企業が集中しているため、効率よく見込み客にアプローチできるというメリットもあります。
一方で、飛び込み営業はお客様に寄り添った対応をしないと、顧客から嫌われてしまいやすい営業手法でもありますので、以下の点に注意する必要があります。
- 一方的に商品・サービスの話をしない
- しつこく何度も訪問しない
- 身だしなみや言葉遣いなどで不快感を与えない
- パンフレット、名刺、資料などの準備をしてから訪問する
- 短いトークで顧客の課題をヒアリングできるようなトークを用意しておく
飛び込み営業は、事前にアポを取らずに一方的にアプローチをするため、不在などでなかなか直接会うことができない場合も多くあります。また、担当者への取次ぎを断られてしまうこともあるので、断られてもくじけない姿勢も必要になります。
より担当者に取り次いでもらえるためには、短時間で分かりやすい提案資料や事前に話す内容を、トークスクリプトに落とし込んでおくことが大切です。
テレアポ
テレアポは、従来からよく用いられている新規開拓の手法です。電話や見込み客リストに基いてアポの獲得を目指して電話でアプローチをしていきます。テレアポを効果的におこなうためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 事前にトークスクリプトを準備する
- できるだけ簡潔に話し、要点(自社商品・サービスを導入した際の顧客の効用)を分かりやすく伝える
- 訪問のアポイントがとれなかった場合には、DMやメールの送付などのフォローを行ったり、時間を置いて再度提案をするなど、次につながる継続的なフォローをする
- 営業マン自身がテレアポをおこなう場合は、午前中はテレアポをして午後に訪問をするなど効率のよいスケジュールを組むこと
トークスクリプトは一度作成して終わりではなく、実際に使用した時の感覚や相手方の反応を元に修正を加えながら改善していくと良いでしょう。
紹介営業
紹介営業は、既存顧客に新たな取引先を紹介してもらう営業のことです。新規案件は取引先との関係性がないところからアプローチを開始し、信頼を構築した上で自社の商品のメリットを感じてもらうという流れが必要ですが、紹介案件の場合にはすでに見込み客から信頼関係を築いている顧客からの紹介ということで、効率よく取引先担当者に話をすることができます。
成約率が高い紹介営業ではありますが、注意点が一点あります。営業活動の際に相手方に不快感を与えてしまった際には、紹介してくれた企業への心象も悪くしてしまうことになってしまい、信頼関係が崩してしまう可能性があることです。
紹介案件を上手く獲得するにもやはり、営業トークスクリプトを用いたり、商談時の提案内容をチーム内で共有したりする姿勢が重要です。また、既存顧客が積極的に案件を紹介してくれるように、チラシやキャンペーンを活用して、紹介しやすい状態を作ることも重要です。
インサイドセールス
内勤営業ともいわれるインサイドセールスは、メールや電話、Web商談ツールなどを用いておこなう非対面の営業手法のことです。非対面という点ではテレアポに似ている部分もありますが、最大の違いとしてはテレアポがアポの取得を目的としておこなう営業活動であるのに対して、インサイドセールスはあくまでも購買プロセスを進めることを目的としておこなわれることです。
インサイドセールスはリードナーチャリング(=顧客の育成)に適しているという特徴があります。インサイドセールスは、即時にアポの取得や営業提案をおこなうよりも、最適なタイミングで提案をできるようにするために見込み客に状況や課題についてヒアリングするところからスタートします。
見込み客が現在どのような悩みや課題を抱えていて、どのような状況にあるのか、どのタイミングでどのようなアプローチをすべきかを明確にすることで、見込み客に寄り添った営業活動を行うことができます。
Webマーケティングの施策
ブログなどのオウンドメディアの運用やSNSの活用、Web広告の出稿などインターネットを利用して新規案件を獲得する手法も用いられることもあります。飛び込み営業やテレアポ営業が「アウトバウンド」の営業であるのに対して、Web系の施策は「インバウンド」の営業といえます。
ホームページの「問い合わせフォーム」へ届いた質問や要望をインサイドセールスの見込み客として対応するなどにより、Webによる集客を営業活動と連携させることができます。
セミナー・展示会
見込み客を増やすための方法としてよく用いられるのがセミナーや展示会です。セミナーで独自のノウハウを公開したり、新商品を展示会でデモンストレーションしたりすることにより、効率よく見込み客に出会うことができます。
セミナーや展示会を成功させるための主なコツは、以下の4点です。
- ターゲット層を絞り込んでセミナー・展示会を開催する(合同展示会の場合はターゲット層が集まる展示会に参加する)
- ターゲットに刺さるキャッチコピーを用意する(セミナーの場合はセミナータイトル、展示会の場合はブースやのぼりなど)
- セミナー参加特典など、参加者の行動を誘発する仕掛けを用意する
- その場で成約に至らなかった場合にはインサイドセールスにつなげるなど、継続的に関係性を築けるようにする
新規開拓営業でアポを獲得するための6つのコツ
「新規開拓は難しい」「新規開拓に成功するためには高い営業スキルが必要」などといわれますが、コツを意識して実践することにより、営業マンのアポ取得成功率をあげることができます。一部の「売れる」営業マンに頼っていた営業チームも、チーム全員でアポを増やすことが可能になります。
アポ取得数を増やすのためのポイントを6つ紹介します。
ポイント① ターゲット層に共通する課題や悩みと自社の強みを知る
新規開拓をする際に必ず知っておきたいのは、ターゲット層が共通して持っている悩み・課題と自社商品・サービスがいかに顧客の悩みを解決できるかということです。
(文書電子化システム販売の例)
顧客に共通する課題:
紙媒体の資料の電子化が進まない
既存の電子化サービスはセキュリティ面に不安がある
自社商品・サービスの強み:
アプリの提供だけではなく導入のコンサルを提供
金融機関にも導入されている強固なセキュリティシステムを採用
顧客に共通する課題・悩みと自社商品・サービスの強みは、常に営業トークの軸となるので、営業マン全員に共有しておくと効果的です。
ポイント② アプローチ前の情報収集と個別の状況の推測
(出典:https://www.karaoke.or.jp/04news/news.php?no=90&pg=2)
個別のアプローチをする前には、顧客情報を収集します。アプローチ前に見込み客の現在の状況、自社の商品・サービスがどのようにメリットを与えられるかなどの点を情報収集しておけば、取るべき行動の方針が明確になるからです。情報収集の手段としては、インターネット、SNS、取引先や既存顧客からの情報提供などがあります。
事前の情報収集の際には、必要な情報が全て揃うわけではありません。例えば、ターゲット層に共通する悩みや課題とは別に、その顧客が個別に抱えている悩み・課題に関する情報が公開されているとはありません。
そこで必要となるのが推測です。顧客の企業規模や業績、営業手法などから個別に抱えているであろう悩みや課題を可能な限り推測できれば、顧客にアプローチした際に興味をもってもらえる可能性が高まります。
顧客の個別の情報は、「企業名」「電話番号」「住所」「現在の状況」などデータベース化して、営業マン全員で共有できるようにしておきましょう。必要に応じて、マーケティング部やインサイドセールスなどとの連携が必要になることもあります。
ポイント③ 提案する理由を伝える+時間設定をする
飛び込み営業やテレアポで顧客にアプローチをする際には、まず営業提案する理由を顧客に明確に伝えることが重要です。提案する理由とは、顧客が自社のサービスを導入した場合に得られるメリットのことです。例えば、コスト削減・業務効率化・収益拡大など一言で顧客の興味を惹きつけられるテーマが理想的です。
そして、新規開拓の初回の電話の場合は、いつ終わるかわからない電話は敬遠されることがが多いので、時間設定をあらかじめするのも効果的です。
「紙媒体のコスト削減について提案させていただきたいのですが、2分ほどお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
このような形で了承を得られれば、少なくとも2分間は提案をすることが可能です。
提案する理由を伝えたり時間設定をしたりする方が良い理由は、基本的に常に顧客は忙しいからです。そして、顧客にとってのメリットを顧客目線で的確に伝えるためには、ポイント①で紹介しました情報収集が的確にできているかが大切になります。
ポイント④ 個別の目標や悩みをヒアリングして共感する
担当者に詳しく話を聞くことができる場合には、顧客が持っている目標や抱えている課題などのヒアリングを目指します。
その際、顧客が情報を開示しやすいように営業マンが情報提供をしたり共感の姿勢を示したりすることも必要です。使用できる主なテクニックとしては以下のものがあります。
- 一般的によくある悩みや課題に関する情報を営業マンから提供する
- 導入事例や使用例を伝える
- 業界のニュースや動向について確認した後に、顧客の状況を伺う
- 目標や課題・悩み、意見を聞けた際には受け止めや共感する姿勢を示す
取引実績のない新規開拓において顧客からの信頼を得るために重要なことは、専門的な知識を持っていることや共感する姿勢で「悩みや課題の解決・目標の明確化のために力になってもらえそうだ」という期待を抱いてもらうことです。
顧客の口から目標や課題を聞き出すことができた段階で、非常に大きな営業成果が得られたといえます。そのうえで、自社商品(サービス)をアピールできれば非常に効果的な営業活動が行えます。
ポイント⑤ ヒアリングに成功したらアポの日程を提案する
基本的には2分程度の中でポイントを上手く絞ってヒアリングをしていくことが求められるので、顧客の状況の推測などの事前準備がやはり成否を分けるポイントになります。顧客に価値を伝えられたら、アポの取得を試みます。
「今回お伝えさせていただいた内容についてお客様の状況に沿った提案をさせていただきたいのですが、〇日の〇時、あるいは▲日の▲時ですとお時間いかがでしょうか?」
といった形でアポの取得を試みていきます。この時、候補の日程を2つもしくは3つ提案するのが理想的です。
ポイント⑥ 適切な情報提供と問い合わせに対する効果的なアプローチの仕組みを作る
ポイント①~⑤はアポの取得を自らおこなう際のコツですが、アポの見込み客を効果的に増やすコツもあります。
Forrester社がBtoB企業の購買担当者に対して行ったアンケート調査によると全体の67%もの担当者が「購入前に自分で商品やサービスに関する情報を調べたい」と回答しています。
インターネットが当たり前のこととしてビジネスに利用されている時代においては、情報提供が適切にされているか否かが顧客の商品購入の選択肢に入れるか否かを決定づける要因になります。例えば、ホームページにおけるコンテンツの充実やSNSでの定期的な情報提供などが効果的です。
さらに、顧客の興味を惹きつけ、クロージングに結びつけるためには、いかに顧客からの問い合わせ件数を増やし、問い合わせに対して適切な営業活動を行うかの仕組みづくりを考えることが必要です。
情報の提供は「待ち」の営業手法になってしまいがちなので、問い合わせや資料請求をされた見込み客に対するアプローチのタイミングや手法を仕組み化することにより効果的な営業活動につながります。
新規開拓営業を実践してみる
新規開拓営業は、理論を学ぶだけではなかなかスキルアップすることはできません。実践して多くの顧客に対してアプローチを繰り返すことによって、初めてスキルアップさせることができます。
例えば、テレアポやインサイドセールスの際のトークの内容は、実際に顧客の担当者と話をしているとトークの内容によって反応の良し悪しが変わってきます。実際の反応を見ながらトーク内容をブラッシュアップしていくことで、営業の精度が上昇します。
また、商談の場数を踏むことで顧客に共通する悩みや課題の把握、業界に関する知識が増え、個別の企業の悩みについての推測も立てやすくなります。
そして、営業活動はチームとして情報共有しながら進めればさらに効果的です。スタッフ同士で顧客情報を共有することで、アプローチ手法や顧客のニーズ・悩みの推測について情報を共有できるようになります。 トークスクリプトの共有やロープレなどによる苦手項目の改善、進捗状況の共有などチームで実践することのメリットはたくさんあります。
最初から完璧を目指すのではなく、実践しながらスキルを高めていく姿勢で新規開拓営業を進めていく形が理想的です。
まとめ
企業存続・発展のために不可欠な新規開拓営業は、コツを意識し実践することで成功率が上がります。重要なことは顧客やビジネスについて情報収集を丁寧におこない、調べた情報を上手く活用することです。また、顧客は常に忙しいということを理解して、簡潔・的確に要点を伝えることが重要です。
営業部のスタッフが複数いると、どうしても営業マン一人ひとりによってスキルのバラツキが生じてしまうものですが、新規開拓のスキルはトークスクリプトを共有することでスキルを均一化したり、弱点に気が付いたりすることができます。
情報共有の際にはITソフトを使用する手もありますが、簡単なチェックシートを活用するだけでも効果が期待できます。「営業スキルチェックシート」で、営業マンが営業活動を行う上でチェックしておきたいポイントをまとめています。ぜひご覧ください。