営業とマーケティングの間の溝を埋める、成果に繋がる3つの連携

営業 マーケティング 連携

BtoBの新規開拓のスタイルとして、Webサイトや広告、展示会でリード獲得をマーケティング部門が行い、営業部門がアプローチと提案をして、受注を獲得するという流れをとっている企業も多いのではないでしょうか。

しかし、そのような中で「営業部門とマーケティング部門が上手く連携できていない」「両部門の仲が悪い」という声が上がることは少なくありません。長年この課題は言われ続けていますが、なかなか解消されないのはなぜでしょうか。

今回は、この問題を解決するために、マーケティング部門・営業部門の両方の視点から両部門間にある溝について考え、3つの解決策をお伝えします。

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営業部門とマーケティング部門の間の溝とは

営業部門とマーケティング部門の間の溝とは、リードを獲得して見込み度の高いお客様を営業部門に引き渡す「マーケティング部門」と、その見込み客にアプローチして契約まで結びつける「営業部門」との間に生じる誤解や認識の違いのことです。

営業部門とマーケティング部門の間に、溝を感じる人はどれくらいいるのでしょうか。試しにGoogleの検索枠に「営業 マーケティング」というキーワードを入れてみました。

営業マーケティング検索

すると、「営業 マーケティング 連携」や「営業 マーケティング 対立」というキーワードが候補としてあがりました。ここで候補(サジェスト)として上がるということは、多くの人が検索している証です。

世の中の営業、マーケティング関係者にとって、営業部門とマーケティング部門の連携、対立について関心を持っている人が多いようです。では、なぜこのような事象が起こっているのでしょうか。

営業部門とマーケティング部門の役割の違い

まず、営業とはどのような役割なのでしょうか。営業の役割は、一言でいうと売上げを獲得してくること、売上げを高めていくことです。

お客様の課題解決のために自社の商品・サービスをお客様へ提案し、購入いただくことが主な業務です。企業によって異なりますが、年間・月間目標売上げが設定されていることが多く、その目標売上げを達成するために営業部門は日々奮闘しています。

お客様それぞれの現状と課題の把握し、課題解決の提案をします。中にはお客様自身が、自社の課題を明確に把握できていない場合も少なくありません。営業マンが、ヒアリングを通してお客様の本質的な課題を明確にし、解決に向かってお客様と伴走します。

オンライン商談が進む現代でも、対面営業を重視する日本企業は少なくなく、お客様と対峙しコミュニケーションをとる時間や、お客様のことを考える時間が営業業務では大切になります。そのため多くの時間を「お客様」に割くことが重要視されます。

一方、BtoB企業のマーケティング部門に求められる役割は、市場調査やPR、カタログ作成、新商品企画などがありますが、主な役割としては「見込み度の高いお客様の獲得」とする企業は少なくありません。

例えば、

  • 多くの見込み客を獲得するためにどの展示会に出展すべきか?
  • どのように魅力的なWebサイトを制作し、価値のあるコンテンツを設けるべきか?
  • 獲得したリードに対して、どのようなメールマーケティングを行っていくべきか?

などを日々考え実行していきます。

そのため、マーケティング部門の場合は、営業部のように直接的にお客様と接触する事ではなく、多くの時間を施策別のリード数の獲得促進やコンバージョン率・開封率などのデータ・数字を分析することに時間を割いています。

両部門が抱える不満とは

営業部門が抱えるマーケティング部門への不満としては、下記のようなものが挙げられます。

  • マーケティング部門から引き継いだお客様の見込み度が低い
  • マーケティング部門は会社の売上げに直接貢献していない
  • マーケティング部門はオフィス内で作業している楽な仕事だと思っている
  • マーケティング部門はお客様・営業現場のことをわかっていない
  • マーケティング部門はこの施策やってください、このお客様の追客をしてくださいと十分な情報共有がされないまま依頼ばかりしてくる

一方、マーケティング部門が抱える営業部門の不満としては下記のようなことがあるのではないでしょうか。

  • せっかく営業部門に引き渡した見込み客を放置している
  • 営業部門は自分たちが作成した資料やコンテンツを活用しようとしない
  • 営業部門は目先の数字にしか興味がない
  • 営業部門だけが売上げを持ってきているような態度をとる

なぜこのような不満が発生するのでしょうか。それは、営業部門とマーケティング部門の役割の違いです。前述した内容を表にして比較してみましょう。

営業とマーケティングの役割

営業部門の役割は「売上げ(=受注の獲得)」であるため、可能な限り短期間で容易に受注に繋がりそうな案件に注力します。それに対して、マーケティング部門の役割は「見込み客の獲得」であることが多いため、見込み客を多く獲得できる施策に注力する傾向にあるはずです。この、それぞれが追っている役割が異なることが溝をつくる、深めるきっかけとなってしまいます。

例えば、リードの獲得から受注までの間に行うべきこと、所要時間が同じだと仮定します。

マーケティング部門の目線から「いかに多くの見込み客を営業に引き渡す」ことを考えると、見込み度が低い案件でも営業に引き渡そうとします。しかし営業からすると、見込み度が低い案件を引き継いでも営業自身が見込み度を上げる努力をしなければならず、労力と時間がかかってしまいます。時間がかかることで対応できる案件数が少なくなるため、営業はその案件を対応したがらず、結局放置してしまいます。

見込み客の引き渡し①

逆に、営業部門の目線からすると「見込み度の高いお客様がほしい」とマーケティング部門に依頼します。営業としては高い見込み度のお客様をもらうことで、受注までの時間・工数が少なく済み、多くの受注案件に携われるようになります。

しかしマーケティング部門からすると、見込み度を高くするまでの時間・工数が多々かかり、そこまでの見込み度にする前に少しでも見込み度があるならば、営業に引き渡したいと思います。また、求められる見込み度合いが高くなるにつれて、引き渡す案件も少なくなってしまいます。

見込み客の引き渡し②

このように、両部門がそれぞれの指標を達成させようとすればするほど折り合いがつかなくなり、営業部門とマーケティング部門の対立が深まっていってしまうのです。

営業部門とマーケティング部門の協力体制を作るためにやるべき3つのこと

では、両部門が共に協力し合う体制を作るために、どんなことをすべきなのでしょうか。

今回は、以下の3つの施策をご紹介します。

① ゴールは一緒、共通した評価を入れる

② 営業ワークフローと引き渡し基準を決める

③ お互いの業務内容・役割を理解し、賞賛し合う文化を作る

① ゴールは一緒、共通した評価を入れる

目の前の役割を意識するあまり、目標の達成や手段の実行そのものが目的になってしまうことは少なくありません。その場合、最終的な成果が十分に出ないという声も聞こえます。

営業部門とマーケティング部門は、それぞれ与えられたミッションや指標を達成するために尽力していますが、そもそも本質的な目的は何でしょうか?マーケティング部門は見込み客獲得数を増やすことで、営業は受注率の向上でしょうか?両部門の最終的な目的はシンプルで、「会社の売上げを上げること」です。

そのためにマーケティング部門は質のよい見込み客を供給し、営業部門は契約を獲得します。本来は共通の目的を効率よく効果的に達成するために、それぞれ役割分担をしているだけなのですが、いつの間にか自部門の方針に目が行き過ぎてしまいます。

今一度、目的の共通認識をとるために、営業部門とマーケティング部門双方に共通の評価項目や共通のKPIを設定しましょう。

例えば、今までマーケティング部門の評価は、見込み客を営業へ引き渡した数だったとします。その評価の割合を例えば7割にして、残りの3割を会社または事業部の売上げに関する指標にします。

そうするとマーケティング部門の意識は「ただ多くの営業に見込み客を引き渡すこと」から「受注につながる意欲の高い見込み客をどう作るか」という目線に変わって来るのではないでしょうか。

分業制が進みそれぞれの専門性が高まっているからこそ、今一度、本来の目的に適した評価・KPIを設定しましょう。

② 営業ワークフローと基準を決めよう

マーケティング部門が見込み客を育成し営業部門に引き渡すことをあなたの会社で実践している場合、引き渡しの基準や営業ワークフローは明確に決まっていますか?明確に決まっていない場合、まずは見込み客の基準と営業ワークフローを決めましょう。

見込み客の引き渡し③

前述した通り、マーケティング部門は「営業に引き渡す数」を重要視し、営業部門は「効率よく訪問すること」を重要視します。

リード獲得から受注までの時間と仕事量が仮に一緒だとする場合、マーケティング部門が質の低い見込み客を獲得すると、営業部門は受注までに要する時間と仕事が増えてしまいます。逆に、質の高い見込み客を提供すると、受注までに要する時間と仕事が少なく済みますが、マーケティング部門の負担は大きくなります。

毎回その基準がずれてしまうと、どちらか一方の不満が発生するため、明確な見込み客の引き渡しの基準を設けることでお互いの認識を統一させます。

では、どのように引き渡しの基準を決めるべきでしょうか。まずは受注できた案件と受注できなかった案件を分けて傾向を知りましょう。例えば、下記のような表を作り、各項目でポイントをまとめます。

例)

受注できた案件と受注できなかった案件

営業マンとしては、この条件で引き渡してほしいという条件を明確にします。この条件がマーケティング部門として了承できるかどうかを話し合い、決定したらその条件のアポイントを引き渡すようにします。

引き渡しの基準が定まったら営業ワークフローを標準化しましょう。営業ワークフローとは、普段営業マンが行っている営業活動の一連の流れです。お客様との電話やメール、資料作成など幅広い業務を含みます。この営業ワークフローを標準化することにより、営業部門とマーケティング部門それぞれのメンバーが何を行うべきなのかが明確になります。

例えば、マーケティング部門から営業部門がお客様を引き継ぎ、何度か訪問や追客しましたが、近々3ヶ月以内の契約は難しくなったとします。このお客様を一度引き継いだからといって、営業が長期的に追客し続けるのは適切ではありません。

見込み度が低くなったのであれば、再度見込み度を向上させる施策が必要であり、マーケティング部門に戻す必要があります。これをマーケティング部門に戻さず放置することで、マーケティング部門からは営業部門は「引き渡した案件を放置する」「しっかりと対応していない」と思われてしまいます。

そのため営業ワークフローを標準化し、どのような状況でどんなアクションを行い、どの状況になったらマーケティング部門へ戻すかを標準化しましょう。

③ お互いの業務内容・役割を理解し、賞賛する文化を作ろう

マーケティング部門の人と話をする中で、「自分が引き渡した見込み客が受注につながったかどうかが分からない」や「自分の行っている業務がどのように会社で役に立っているのかが分からない」という声を聞くことがあります。

マーケティング部門の役割が見込み客を営業部門へ引き渡すことだった場合、引き渡した後にそのお客様が受注に至ったのか?自分たちの努力が成果に繋がっているのか?マーケティング部門自身では確認しづらくなります。

自分の業務が成果に繋がっているのかを把握することで、モチベーションが上がりやすくなります。例えば、営業部門も「マーケティング部のAさんからの引き継ぎ案件は質が高くいつも助かっている」と思ったことがあることも多いはずです。その時にはしっかりと本人に伝えることで、本人やマーケティング部門のやりがいに繋がります。

そのため、引き渡し案件の進捗報告や日頃の感謝を伝える場を作ることをお薦めします。例えば内容としては、下記3つを提案します。

  • 引き渡し案件の進捗共有会
  • 営業部門から情報発信
    「マーケティング部門の○○さんからの引き継ぎ案件は見込み度高くいつも助かっています!」という称賛
  • マーケティング部門から情報発信
    「営業部門の○○さんは定期的に案件進捗の情報共有、追客を行ってくれています!」という称賛

営業部門とマーケティング部門の溝を感じている経営者、部門責任の方は意識していただき、率直な意見やお互いに協力しあえるような文化を構築してみてください。

まとめ

営業部門とマーケティング部門の連携に関しては、多くの企業で課題に挙がっているでしょう。この課題を克服することで、大きな成果に繋がることも大いに考えられます。

成果につなげるためにも一度営業ワークフローを見直し、見込み客引き渡しの基準設定や、営業部門・マーケティング部門からの賞賛する文化の醸成を是非行ってみてください。
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