経営者が知っておくべき潜在顧客獲得の重要性

潜在 顧客

「売上げ目標は達成できているのか?」「目の前の数字が出ているのか?」経営者の皆さまは常に気にされているかと思います。目の前の数字を考えると「潜在顧客」は見込み度合いの薄い顧客と感じてしまい、優先順位が低くなってしまうこともあるかもしれません。

しかし、顕在顧客のみにアプローチしていると、短期的には売上げを獲得できても、将来的な売上げは頭打ちになってしまいます。そこで、売上げを継続的に拡大させていくために大切な顧客層が「潜在顧客」なのです。

今回は、経営者が知っておくべき、潜在顧客の獲得のポイントについて解説していきます。

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潜在顧客とは?

潜在顧客とは、顧客が課題のある環境にいるけれども、まだ自身では課題に気付いていない顧客のことです。購買プロセス上では、商品・サービスの契約に今すぐにつながらない顧客層ですが、プロセスの早い段階にいるだけで、将来的に契約に至る可能性がある顧客になります。

同時に、多くの場合は、まだ自社の商品・サービスを知らない段階の顧客層でもあります。潜在という漢字の通り、まだ潜っていて水面下にいる(顧客の意識の下にいる)状態とイメージするとわかりやすいでしょう。

ただし、潜在顧客は「へぇ、世の中にはそんな商品・サービスがあるんだ……(まぁ、自分には関係ないかな)」のような反応をする顧客ではありません。「知らなかったけれど、それはいい商品・サービスだ!興味がある。」と、商品・サービスの存在を知ると興味を持ってくれる見込み度合いの顧客です。

潜在顧客獲得の重要性

では、なぜ潜在顧客を獲得しなければならないのでしょうか。 

潜在顧客を獲得することで、自社の商品・サービスを提供できる顧客層が広がるため、現在の売上げの上限を拡大することができます。

例えば、ブルーボトルコーヒーは、この潜在顧客の存在をうまく使って日本に進出した企業と言えるでしょう。創業者であるジェームス・フリーマン氏が来日した際、日本の喫茶店文化に感銘を受けたと言います。

当時、日本にはスターバックスコーヒーも進出しており、日本企業のカフェも既に多数出店しており、コーヒーを嗜む文化はありました。さらに喫茶店など、コーヒーを楽しみ、1杯ずつ淹れてもらう時間を楽しんだり、淹れてもらった1杯をゆっくりといただく習慣もありました。このように、コーヒーを飲むことのできる場所は飽和状態に見えます。

1杯ずつコーヒーを淹れることを「1杯ずつ『ドリップ』する」、コーヒー豆の産地や味の違いへのこだわりを「シングルオリジンコーヒー」「ブレンドコーヒー」と示すなど、ブルーボトルコーヒーが提供したものはこれまでの日本のにもありました。

しかし、喫茶店にはない側面も併せ持っていました。光のたくさん入る建築やシンプルで無駄のない内装、「バリスタが目の前であなたの1杯を淹れてくれます」という丁寧さをアピールするパフォーマンス、禁煙、「コーヒーブームの第三の潮流」などといった若者にウケるであろう要素を持っていました。

結果として、

  • コーヒーは好きで、カフェにも行く
  • 『喫茶店』はなんだかちょっと敷居が高いような気がする
  • いいものへの価値を理解して対価を払いたい

という、1杯600円近い高単価なコーヒーでも購入したい層の潜在顧客を、見事に発掘しました。

現在見込める範囲で満足せず、潜在顧客を獲得するために他の一手を繰り出して上手くアプローチをすることで、売上げの上限をさらに高めることができます。

潜在顧客と見込み客の違い

潜在顧客に対して「見込み客」という言葉もあります。購買を考えている、購買を見込んでいる顧客だと考えてください。すでに水面から姿形を現しており、あとは営業マンの一押しで、90%くらいの確率で契約に至ることができるであろう顧客のことです。

潜在顧客と顕在顧客との違い

潜在顧客に対して「顕在顧客」という言葉もあります。顕在顧客は、見込み客とほぼ同じです。顕在顧客は、自身の抱える課題や悩みをすでに認識しており、その課題や悩みの解決に対して何かしらの行動を起こしているような顧客のことです。

潜在顧客と比べ、自社の商品・サービスに対して強い興味・関心を示しており、すぐに購買に至る可能性もあります。リピートされやすい商品・サービスの場合、過去に利用したことのある顧客も、顕在顧客と言えます。

潜在顧客を獲得する方法とは?

次に、潜在顧客を獲得するための方法を考えましょう。具体的にどのような方法があるのか、10種類ご紹介します。

1. 現時点の見込み客(顕在顧客)を明確にする

まず最初に行うことは、現在の営業案件や顧客のデータを収集して、現時点の全体的な顧客層を正確に捉えることです。

例えば、業務用の洗濯用洗剤の場合、「業務用」と銘打っているためホテルのランドリールームやコインランドリー事業者だけが顧客になるのでしょうか。

業務用の大容量の詰め替えは、例えば、

  • 頻繁に日用品の買い物に行けない共働き夫婦
  • 育児や介護で何度も洗濯をする人
  • 買い物に時間を割けない人

が、大容量の業務用洗濯用洗剤を購入しておくという可能性も考えられます。

この例では、見込み客はホテルやコインランドリー事業者。潜在顧客は、「まだ大容量の業務用洗濯用洗剤を購入することで何度も潜在を買いに行く必要がなくなる」ということに気付いていない共働き夫婦や育児や介護で、何度も洗濯をする人などになります。

(先入観による)意図していた用途だけに惑わされることなく商品・サービスの特長を捉えることで、これまで見えていなかった潜在顧客を見出すことができる可能性があります。

2. 顧客層に応じてアプローチ方法を検討をする

現時点での潜在顧客を明確にしたら、潜在顧客へのアプローチ方法を検討しましょう。

新規購買に至る顧客層を分類すると、

  1. 新規顧客になりうる「見込み客(顕在顧客)」
  2. 見込み客になりうる「潜在顧客」
  3. 潜在顧客になりうる「まだ自社の商品・サービスを全く知らない顧客」

と分けることができます。

顧客層の分類

「見込み客」を購買につなげるための有効なアプローチは、営業マンによる継続的な連絡が有効です。なぜなら、課題や悩みを既に認識しているお客様に対して、その場で課題解決のヒントや見込み客に合わせた活用事例など、個別化されたコミュニケーションができるからです。

見込み客には、過去に一度でも購買した客も含まれるためには、リピート購買を促すために、過去の経緯を踏まえた上での提案を行う必要があります。

また、「営業担当者が異性であったところを同性に変更してみる、同性であったところを異性に変更してみる」「担当者の世代を離してみる、世代を近づけてみる」などアプローチ手法を変えることで案件化に繋がる可能性もあります。

潜在顧客(まだ自社の商品・サービスを全く知らない層)に効果的なアプローチは、CMやテレビ特集、デジタル広告です。このようなデジタルでの接触の特徴としては、多くの人に手軽に興味・関心を引くことができる点です。

デジタルでの接触で反応(お問い合わせや資料ダウンロードなど)が合った顧客に対して、営業マンによる継続的なアプローチに切り替えることも効果的です。

3. リストからの発掘

アウトバウンドで潜在顧客を発掘するための方法として、直接リストにアプローチすることも挙げられます。リストの中には、自社の商品・サービスに対して興味・関心のある顧客から無関心な顧客まで存在します。

そのうちアポイントにつながる層は、見込み客層の顧客が多いでしょう。しかし、「興味関心はあるけど、今すぐ話を聞くほどではない」であったり、「将来的に検討したい」という顧客も多くいます。

特に、インバウンドのアプローチと比べて、アウトバウンドのアプローチは直前まで自社のことや商品・サービスのことを知らなかった顧客がほとんどです。長期的なフォローができるように、目印を設定しておき、本格検討のタイミングで再度アプローチすることが大切です。

4. 既存顧客や見込み客(顕在顧客)の声を聞く

潜在顧客の中の潜在的な需要を掘り起こした例をご紹介します。2016年に花王株式会社が発売した、業界初のスプレー式食器用洗剤です。

この商品の利用者は、花王株式会社の食器用洗剤を利用する見込み客とほぼ同じでした。そこで、顧客がかねてから抱えていた「洗いづらい細かい場所を、綺麗にしたい」「専用ブラシを使わずに、洗えるといい」といった要望に応えました。

スプレー式の洗剤といえば、風呂掃除を目的とした洗剤やカビ取り剤で起用されていましたが、それまで食器用洗剤にスプレー式の洗剤は存在していませんでした。

しかし花王株式会社は、わざわざ細いブラシや長いブラシを使って洗っていたような水筒や弁当箱、ミキサーやすりおろし器のすりおろし部分など、洗いづらい部分が洗えるスプレー式を開発・発売し、ヒットしました。

このように、既存顧客や見込み客(顕在顧客)が抱えている悩みに対しても、耳を傾けることによって、さらに潜在顧客を獲得することができる可能性が広がります。

5. ウェブ集客の活用

地域や地元にこだわり対面営業を行っている企業は、ウェブを活用することで潜在顧客の獲得につながります。

一方、すでに自社ホームページやウェブサイト、SNSを運用している会社も多いかと思います。ウェブ集客の目的は「見込み客の獲得」です。経営者や管理職の方々は、ウェブ運営と集客の結果を把握しておきましょう。

ウェブ集客の強みは、場所の制約がなく、多くの潜在顧客に簡単にアプローチできることです。例えば、東京にある訪問営業を行っている企業の場合、効率よく潜在顧客を見つけ出すとなると、営業活動ができる範囲は都内あるいはその近郊の県になります。

しかし、お問い合わせフォームや一括の資料請求のフォームなどを設置することにより、商品・サービスに興味・関心のある全国の潜在顧客から連絡がくるような仕組みを作ることができます。

6. 展示会やイベントへの出展

展示会やイベントへの出展は、潜在顧客と会うことができる貴重な機会です。自社の商品・サービスを知らない潜在顧客に自社のことを認知してもらうことができます。

展示会やイベントでは、多くの顧客と接します。そのため対応した顧客が見込み度合いが高いのかどうかを管理しておかなくてはなりません。名刺にメモや目印をつけるなどして、「誰が対応したのか」「どのくらいの見込み度合いであったのか」を後で見ても分かるようにするとよいでしょう。

展示会やイベントの活用方法

  • 「どのような情報を収集するのか」のゴールを設定する。
  • 商品・サービスの知識が少ない場合は自社のブースへの誘致を行う。
  • 自社ブースへの来場者には、「どのような目的でこの展示会やイベントに参加したのか」をヒアリングする。相手が競合他社の担当者である場合も、受け入れて誠実に対応する。
  • 自社ブースへの来場者に、すぐに売り込もうとしない。
  • 自社ブースへの来場者に、アンケートをとる。
  • 他社のブースにも足を運び、接客対応や説明技術を学ぶ。
  • 展示会場、イベント会場で来場者の注目を集めているブースを分析する。

7. オンライン広告出稿

Google(グーグル)広告、Yahoo!(ヤフー)広告、Facebook(フェイスブック)広告、Instagram(インスタグラム)広告など、多数のオンライン広告があります。

このようなオンライン広告を出すことにより、全国の潜在顧客に対して簡単にアプローチすることができるようになりました。オンラインで広告の出稿を完結させることができ、DMのような紙で印刷したり、郵送する必要がないため、すぐに取り組める手法です。

オンライン広告は、効果分析が簡単にできます。それぞれのメディアの管理画面をみると、結果の数値や単価など一覧で見ることができるのです。広告は出して終わりではありません、広告の単価を下げていく努力をする必要があります。

常に顧客の反応を分析して、改善していくことで、費用対効果を上げることができます。

8. 共催セミナー開催

自社の単独セミナーの開催と比較すると、セミナー終了まで登壇者との調整やコミュニケーションなどの業務が煩雑になる可能性があります。しかし、複数社集まってセミナーやイベントを開催することで、自社では保有していない層の顧客情報を獲得することができます。

共催セミナーは、登壇する企業の知名度や業界で集客できる数が変わってきます。自社と一緒に共催することで、自社で提案するよりも価値がある提案をすることができるような企業と共催することで相乗効果を期待できます。

また、共催セミナーを行うことでお互いのビジネスの理解度合いも深まり、お互いの顧客で相手企業が解決できる課題があれば、紹介し合うこともできるようになります。

9. 部門間で情報共有を行う

部門間で情報共有することにより、新しい潜在顧客を獲得するヒントを得ることが出来ます。なぜなら各部門で、その部門でしか知りえない貴重な情報があるからです。

例えば、営業部門では、営業活動を通して顧客のニーズや本音をヒアリングすることができます。これは、直接顧客と接する機会が少ないマーケティング部門にとってはなかなか難しいことです。

一方で、マーケティング部門では、市場全体の動向や緻密な分析により、市場における顧客のニーズを把握することができます。これは、個別の顧客に集中してアプローチする営業にとっては、なかなか見えづらい視点です。

このように、役割や業務によって視点も変わってくるため、お互いの把握している情報を共有することによって、新しい顧客のニーズに気付くことができる可能性が高まります。

10. 競合他社の研究

競合他社にとっての潜在顧客と見込み客は、自社にとっても同様に、潜在顧客であり見込み客です。競合他社とは、市場のシェアの占有度を争っているのですから、競合他社が行った広告やキャンペーンや営業戦略を分析することで、自社の戦略へのアイデアを得ることができます。

「競合他社が成功した事例を元に自社ではどのような強みを出せるのか」「競合他社がなぜ〇〇の戦略で失敗してしまったのか(自社では克服して差別化することはできないか)」など分析することで、自社ならではの戦略の切り口が見えてくるかもしれません。

まとめ

潜在顧客は、将来的に見込み客になりうる顧客です。ニーズが顕在化していないからといってアプローチしないと、市場は頭打ちとなり売上げの拡大には限界が生じます。

潜在顧客を獲得する方法には、さまざまありますが、デジタル技術の普及により、従来よりも潜在顧客に容易に接触することができる環境が整っています。従来の営業方法では、アプローチできなかった顧客に対してもアプローチをしていくと良いでしょう。『デジタル時代の「売上げ拡大戦略と実行」ガイドブック』では、 中小企業の経営層が策定すべき戦略の策定方法から、実際に現場に落とし込むまでのSTEPを5つに分けてお伝えしています。是非ご覧ください。

    売上げ拡大戦略と実行ガイドブック

戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

B2Bマーケティングを幅広く経験。外資系ソフトウェア企業の日本支社立ち上げを行い、創業期の全マーケティング活動を責任者として行う。現在、東京と海外を行き来しながら場所にとらわれない働き方を通じ、日本企業のマーケティング支援の戦略立案から実行までの支援を行なっている。