営業マンの方はタスク管理をしているでしょうか?タスク管理ときくと「かえってめんどう……」「毎年手帳を買ってトライするけど続かなかった……」「タスク管理ツールが難しくてあきらめた……」という方も多いかも知れません。
しかし、営業マンはもちろんビジネスマンにとって、タスク管理は非常に重要なスキルです。
人の脳のキャパシティは実はあまり大きくありません。一度に覚えられることは少なく、忘れるのは速く、集中力が続くのも30分程度で、ファーストチェス理論といって5秒で考えつくことと30分後に考えることは86%が同じだそうです。
多岐にわたる仕事をこなす営業マンは、意識してタスク管理を上手に行わないとついついムダな時間を消費してしまいかねません。タスク管理を行って仕事の全体像を可視化して、今やるべきことに集中できるようになりましょう。
本記事では、営業マンがタスク管理を行うメリットや、営業マンにお薦めのタスク管理ツールをご紹介します。

営業マンのタスク管理とは
営業マンのタスク管理とは、簡単に言えば「売上げに直結する仕事に時間を多く配分し、それ以外の業務を効率化する」ことだと言えるでしょう。
営業マンの仕事は、お客様との打ち合わせ、商談、連絡業務、社内外スタッフとの打ち合わせ、提案書作成、日報作成などの日常業務だけでなく、急なお客様からの呼び出し、クレームあるいは予想外の嬉しい発注など予定通りにはいかないことまで実にさまざまです。もちろん、新規開拓もしなければなりません。
営業マンはパレートの法則にのっとり、売上げ目標から逆算して以下のような優先順位をつけて、タスクに取り組む必要があると言えます。
売上げに直結する仕事
・大口顧客との商談、打ち合わせ、フォロー
・ニーズがたまにあるお客様への訪問、連絡、商談
・新規開拓営業
売上げに影響するが工夫次第で時間短縮できる仕事
・提案書類作成
・営業リスト作成
・営業メール作成
売上げに直結しない仕事
・社内書類作成
・社内会議
営業マンのタスク管理の重要性
2019年のHubSpot Japan社の調査によると、日本の営業マンがムダだと感じる業務の1位は「社内会議」2位が「社内報告業務」3位が「キーパーソンとの面会ができず再訪問」となっています。組織の問題を除けば、営業マンにとって大きな課題は事務系業務の効率化にあるようです。
営業マンの多くは見込み客の発掘から契約、その後のフォローまでを担当しています。タスクを正しく管理しないと営業活動に時間が割けなくなり、訪問数やコミュニケーションの時間が減ってしまいます。
営業マンの成績はたいていの場合、お客様との商談やコンタクト数に比例します。目標を達成するには、仕事の優先順位をつけて自分で仕事をコントロールしていく必要があり、そのためにタスク管理が重要になるのです。
タスク管理とは、いわば自分の頭の中にある内容をすべて外に吐き出して整理することです。ツールは紙でもITツールでもよいのですが、仕事の整理整頓ができると優先順位がたてやすくなりますし、以下のようなメリットがあります。
タスク管理のメリット
- タスクの抜け・漏れがなくなる
- 自分の抱えているすべての仕事を大~小まで可視化できる
- 優先順位の高い仕事と低い仕事が明瞭になる
- 仕組化すべき仕事、短縮化すべき仕事がわかる
- 締め切りまでにタスクを完了できる
- 迷う時間、探す時間、考えすぎる時間がなくなる
タスク管理ができていない営業マンの特徴
ここでは、タスク管理ができていない営業マンの特徴を解説します。
優先順位がつけられていない
タスク管理ができていない営業マンは、往々にして物事の優先順位をつけるのが苦手です。優先順位がつけられないと、近日中に必要な提案書の作成ができていなかったり、営業アプローチが必要なお客様へのタイミングを逃してしまいがちです。
急ぎだからという理由で細かい仕事に振り回されたり、ついつい自分と相性のよいお得意様ばかり訪問したり、一つの仕事に職人のように時間をかけてしまう営業マンは時間がいくらあっても足りません。日々忙しいので自分でも頑張っている気はするのですが、重要な仕事を後ろ倒しにしたツケは結局、月末や期末に数字となって現れます。
お客様は大切ですが、自分で仕事をコントロールする意思を持たないと、努力の割には成果があまり伸びない残念な営業マンになってしまいます。
営業活動の量が少ない
営業マンは見込み客に営業アプローチしない限り、営業成績を上げることはできません。
前述のHubspot社の調査のように、日本の営業マンは内勤業務に割く割合がかなり多く、なかなか営業時間を増やせないことが課題です。会社の問題だけでなく、営業マン自身が提案書作成などに必要以上の時間をかけていることも少なくありません。
考える業務は突きつめていくと、どこまでも時間がかかります。パーキンソンの法則でも言われるように、結局締め切り間際まで仕事が膨張してしまいます。自分で、各タスクに締め切り時間を設定する必要があるのです。
残業が多い
残業が多い営業マンも、タスク管理ができていない可能性があります。企業文化で残業が当たり前になっているケースや、内勤業務は夕方から夜と決めているような営業マンもいるかも知れませんが、早く帰りたいのに毎日のように残業をしている場合は、自分のタスク管理や業務のスピードを見直す必要があるでしょう。
整理整頓ができておらず探し物に時間がかかっている、仕事と仕事の合間の時間が長すぎるなど、もしかしたらいわゆる段取りが悪いのかも知れません。ちなみにビジネスマンが探し物に費やす時間は、年間150時間という調査結果も出ています。
一度、誰かに自分の仕事を引き継ぐつもりで、ファイル、フォルダの保存方法を見やすく整理整頓するとよいかも知れません。
打ち合わせが長い
できる人の話は簡潔です。会議やミーティングなども主催者が優秀だとテキパキ進行し、きちんと方針も決まります。打ち合わせが長いのは、ブレインストーミングの場合を除くと、話し合う論点が決まっていないか、話が脱線しても主催者が元に戻さないことが原因です。
打ち合わせの目的にコミュニケーションを含んでいる場合は長さも大切ですが、2回目、3回目と回数を重ねるごとに時間短縮できるはずです。長すぎる打ち合わせは、自分の時間はもちろん、参加する人の業務時間も圧迫してしまうことを留意しておきましょう。
迷う時間、止まる時間が長い
タスク管理ができていない営業マンは、迷ったり止まったりする時間が長いのではないでしょうか?頭の中でタスクが整理されていないと、一つの仕事をしていても「そういえばあの仕事も明日までだ」「来週の〇〇の準備もしなければ」など気が散ってしまうものです。不安やプレッシャーは心を疲弊させますし、集中力を途切れさせます。
そこで少しお休みとばかりに一度ネットを見ようものなら、あの手この手で長く閲覧し続ける仕掛けがされており、時間はあっと言う間に過ぎてしまいます。できるだけ業務時間中の空白の時間を増やさないためにも、タスク管理をして「これが終わったら次は〇〇」とタスクを即実行できることが望ましいと言えます。
営業マンのタスク管理の方法
タスク管理の基本的な流れは、仕事の分解→優先順位分け→実行です。 ここではタスク管理の方法を解説します。
タスクを分解する
タスクはできるだけ細かく分解することがポイントです。分解せずに大きなタスクを追うと、進捗が不明確になためプレッシャーが募ったり、具体的に何から始めればよいかわからず、先延ばししてしまいがちです。分解してみれば、大きな仕事も簡単な仕事の組み合わせにすぎません。
例えば、提案書なども以下のように手順を分解すると全体像がわかり何から着手すればよいか見えてきます。スケジュールも立てやすくなるでしょう。
(例:「次年度の新卒採用計画提案」を作成する場合)
- 採用計画提案書の過去事例を探す(SFA、社内共有資料、自分が過去提案した企画等)
- 提案の根拠の部分を今の環境にあわせる
A:来年度の景気予測、最近の社会環境の変化
B:最新テクノロジーの動向のトピックス
C:学生の就職意識調査の結果からの推測 - 景気が落ち込む時期に採用を行うメリットを羅列する(不況の場合)
A:これまで手が届かなった優秀な人材を採用できる
B:少数精鋭で採用していれば会社の将来を支える人材がとぎれない
C:採用コストは例年より抑えられる - 自社商品・サービスの紹介をまとめる
- 添付用の事例を何種類か用意
※過去の提案書をフレームワークとして活用すると難しそうな提案書の作成も、意外と簡単に着手できます。赤入れを入れる感覚で練りながら、作業の後半にオリジナリティを加えていきます。
以下のようなよくある仕事は、タスクを細分化した上でパターン化しておくと便利です。
- 営業日報:報告用文章を何パターンか決めておく
- メール送付文:お礼、連絡、お詫び、アポイント、案内など目的別にひな型用意
- 提案書:過去成功した提案書をフレーム化
タスクごとの優先順位を決める
タスクを細分化すると、するべき作業が明確になります。営業マンのタスクはかなり幅広いのですが、すべて可視化してしっかり優先順位を決めましょう。
(営業マンの1日のタスク例)
・お客様との電話やメールやチャットでの連絡業務
・お客様との商談、打ち合わせ
・新規開拓営業用のリスト作成
・新規開拓〇 〇 件
・見積書作成A社
・提案書の前例探し
・他部門との打ち合わせ
・日報、社内提出書類作成
タスクを書き出したら、毎朝、本日行うべきタスクを確認します。優先順位の高い重要なことを優先すべきですが、朝方エンジンがすぐかからない人は、手始めの30分はメール対応など簡単なタスクと決めてもよいでしょう。重要な業務から着手して、メール対応については1日に何時~何時と決めるのも効率的です。大切なのは、迷わないように自分のルールを決めておくことです。
やるべきこと、やらないことを決める
タスクをすべて書きだしたら、するべきこととする必要がないことも仕分けします。頭の中で考えていた時には重要に思えていたことも、俯瞰して見るとそうでもないことがあります。タスクが重複していることもあります。
今まで行ってきたことでも、成果に結びつかないタスクはやらないことを決めます。例えば、担当エリアのビルのセキュリティが厳しくなり、飛び込み営業が昔より非効率になっているのであれば見切りをつけて、その時間をテレアポ、メール営業、SNS営業にシフトします。
営業マンが活用できるタスク管理ツールの紹介
タスク管理ツールは、手帳でも付箋でもITツールでもなんでも自分に合うものを選ぶことが大切です。ここでは、ビジネスマンに人気のお薦めのタスク管理ツールを4種類ご紹介します。いずれも無料プランあり、モバイル対応のツールです。
Trello
特徴:
- タスクを付箋をはるように画面上で簡単に動かせる
- ITリテラシーがあまりなくても直感的に理解できるデザイン
- チーム共有するとタスクごとの担当者のステータスも一目瞭然
価格:無料プラン、Business Class:$9.99/ユーザーあたり/月額、Enterprise:$20.83/ユーザーあたり/月額(100人のユーザー向け)
メリット&活用のポイント:
タスク管理ツールと言えばTrelloと言ってもよいくらい、定番のタスク管理ツールです。なんといっても操作が簡単です。シンプルなデザインでありタスクをドラッグ&ドロップ式であちらこちらに動かせるのでExcelと比較しても手順が格段に少なく、ストレスなくタスク管理を短時間で行えます。
作業中のタスク、今日すべきこと、明日すべきこと、来週や来月すべきこと、完了タスクが一覧表示されますので、自分の仕事の進捗を一望しながら目の前のタスクに集中できるでしょう。営業マンに限らず、全てのビジネスマンのタスク管理に適しています。
Asana
特徴:
- 世界 195 カ国で何百万人ものユーザーが利用
- 元Facebookのエンジニア2人が開発したツール
- 連携アプリは 100 以上。メール、ファイル、カレンダーなどを一元管理
価格:
Basic(無料プラン15人まで)、Premium : US$10.99/月/ユーザーあたり(月間払いの場合は US$13.49/月)、Business :US$24.99/月/ユーザーあたり(月間払いの場合はUS$30.49/月)、Enterprise:要見積
メリット&活用のポイント:
さまざまなプロジェクトのタスク管理が一元化できるのが、asanaのメリットです。「誰が何をしているのか」がリアルタイムで共有できますので、複数のプロジェクトに参加している営業マネージャーや営業マンに適しています。
営業マネジメントに活用する場合、SFAのように取引の状況を把握したり、新しいお客様のオンボーディングなどを迅速に進めるために活用することもできます。チームカレンダーを作成して、スケジュールを管理することも可能です。
Todoist
特徴:
- シンプルなタスク管理に特化したツール
- メモ帳に箇条書き感覚でタスクを入力可能
- 有料プランが低価格
価格:無料プラン、プレミアム:338円/ユーザーあたり/月(年払い)、ビジネス:558円/ユーザーあたり/年払い(月払いの場合678円)
メリット&活用のポイント:
Todoist(トゥドゥイスト)は、タスク管理の中でもっともシンプルなツールかも知れません。メモに箇条書きでもしているような感覚で、タスクを入力できます。タスク全体の可視化、確認、完了が簡単にチェックできるだけでなく予定日や時間も指定できます。余計な機能がないため、かえってタスク管理に集中できるのがTodoist のメリットです。
ITツールが苦手な営業マンが、最初に使うツールとしてお薦めです。自分のタスクの進捗状況をグラフで確認することもできますし、完了タスクをレビューする機能もあるため、チームで活用してプロジェクトの振り返りをすることも可能です。
Wrike(ライク)
特徴:
- ビジネスプロジェクトに特化したタスク管理ツール
- Airbnbをはじめ15,000社以上が導入
- 社内外との横断型プロジェクトに最適
価格:無料プラン(5人まで)、Professional:9.80ドル/月/ユーザーあたり、Business:24.80ドル/月/ユーザーあたり、Marketing/34.60ドル/月/ユーザーあたり、Enterprise 要見積
メリット&活用のポイント:
Wrikeは個人のタスク管理だけでなくグループでの共有タスク管理に向いているツールです。タスクごとにメンバーを変えることができます。自分の部門だけでなく、課や部を超えたプロジェクトチーム、社外スタッフと共同で進めるプロジェクトチームなど、複数のプロジェクトを管理する際のツールに適しています。
常にメンバーのタスクのステータスがわかるため、離れた場所にいるメンバー間の伝え漏れ、確認漏れが減少するメリットがあります。
チームメンバーも互いの作業の状況がわかるため、問題点を早い段階で発見したり、疑問点を確認したりすることができます。情報共有がリアルタイムでされていると不要なミーティングも必要なくなります。テレワークが多い企業にも向いているツールです。
まとめ
仕事のできる営業マンは営業成績を上げるだけでなく、社内書類の提出も遅れることなく四方八方から評判がよいものです。大量の仕事を抱えているのに忙しそうに見えないので、相談もしやすく後輩からも慕われます。
世の中にはマルチタスクが得意な人がいます。近年の研究ではマルチタスクができる人は全体の2%であり、そもそも脳のタイプが違うそうです。もしかしたら社内の仕事が速い先輩は、いわゆるスーパー・タスカーなのかも知れません。
しかし、自分の脳が一般的なタイプだと思うなら、タスク管理のスキルを身につけてタスクを一つずつ高速で回していくことが、仕事のできる営業マンになる早道です。とは言え、ゼロから始めることは大変なので、まず自分に合いそうなタスク管理ツールから探してみましょう。
セールスハックスでは、デジタル時代の営業マンに必要なスキルが身についているか確認できる「営業スキルチェックシート」を無料提供しています。自分のスキルも俯瞰して見てみると、どこを強化すべきかわかります。あわせてご活用ください。