営業成果を上げる営業シーン別の営業テクニックとは

営業テクニック

営業マンが活躍するためには、商品知識やビジネスマナー、立ち居振る舞い方などに加えて、営業シーンごとに商品・サービスをより魅力的に伝える営業テクニックが必要です。

営業テクニックは営業の成果を左右するノウハウであり、知っているかいないかで営業成績に大きな差がつきます。有名な営業テクニックは社会心理学、神経科学、行動経済学などを基に研究されており、再現性が高いのでさまざまな営業シーンで役立つでしょう。

本記事では、営業マンが知っておくべきお薦めの営業テクニックをご紹介します。

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営業テクニックとは「伝える力」

営業テクニックとは、商品・サービスの魅力を効果的にアピールする力です。近年のようにモノとサービスが溢れ続ける中で、お客様に自社商品やサービスを選んで購入してもらうためには「営業マンの伝える力」がとても重要です。

伝える力は特別なスキルではありません。例えば、皆さんもこれまで就職活動や転職活動、昇格試験の面談など人生の節目でしっかり自己アピールをしてきたのではないでしょうか?

  • 「私はこんな人間です。経歴はこうでこんなアピールポイントがあります」
  • 「こんな成果を出してきたから、御社でもこのような成果をおさめ貢献します」
  • 「このような実績を積んできたので新ポジションで〇〇に挑戦したいです」

このように面談で話す内容はもちろん、話し方や言葉遣い、履歴書や職務経歴書の見せ方も対策本をもとに戦略を立てて臨んできたかと思います。営業活動も同じです。商品・サービスがいかにお客様の課題解決に役立つか、自社はどれだけお客様に貢献できるか、その根拠は何かをきちんと伝えられるかで採用されるかどうかが決まるのです。

営業テクニックが今一つだとお客様が商品・サービスを実力より低くとらえてしまう可能性があります。「商品力+伝える力」の両輪が揃ってこそ売上げは伸びていきます。

営業トークテクニックを磨く理由

初回の電話や訪問が終わった後に、次回に会う機会を得るためのトークをしているでしょうか?「今日はありがとうございました」で終わってしまうと、次のアポの機会を得るタイミングを逃してしまいがちです。

  • 「本日はお時間いただきありがとうございました。〇〇様の課題について提案書(又は他社事例)をまとめさせていただきますので、ぜひ来週月曜の午後か水曜あたりでお伺いさせていただけないでしょうか?」

このようにさり気なく伝えることができれば、「水曜日ならいいですよ」「まだ、必要ないかな」「具体的な検討は来年になりそうだから何だったらメールで送ってください」などの具体的な返答が返ってくるものです。ちょっとしたトークを活用するだけで、お客様の見込み度がわかり、その後の営業活動の計画も立てやすくなります。

実は営業現場で効果を上げているテクニックは、ものすごく高度なトークというよりは、ちょっとした言い回しの違い、話すタイミングやフォローの仕方の違いなどが多数です。「コロンブスの卵」と同じように知ってしまえば「なるほど、簡単」と思いますが、知るまではなかなか気付きません。

もし自分の営業トークが上手く伝わっていないと感じるなら、この機会に基本的な営業テクニックの知識を学んでおきましょう。

営業シーン別に身につけておくべき営業テクニック

ここから、営業シーン別に使える営業のテクニックをお伝えします。

営業準備で必要な営業テクニック

営業の仕事の中でもまず「準備」で必要なテクニックです。

お客様の情報収集をする

まず、アポイントが取れたら企業のWebサイトだけでなく、企業名をインターネットで検索して出てきたページを10ページほど読むのもよいでしょう。社風を知るには転職サイトがお薦めです。社内の風景や社長の言葉、給与待遇、求めている人材像など幅広い情報が入手でき企業の実態がイメージできます。

  • 企業のWebサイトやインターネットの検索結果10ページ分を確認
  • 公式サイトの組織図を確認し担当者が「どのような環境にいるのか」をイメージ
  • 転職関連サイトの求人で企業ビジョン、社風、抱えていそうな課題をイメージ

訪問前にある程度の情報を仕入れておくと、アイスブレイクや商談途中の雑談でも話が弾みやすくちらりと話す言葉に「あ、よく調べているな」という印象を持ってもらえるものです。このような小さなことから人は相手に親しみを覚えたり、信頼度を高めます。ビジネスでもプライベートでも、相手に興味を持って理解しようとしている人は相手からも好感を持たれます。

営業ロープレを行

本番前にロールプレイングしておくことも大切です。商談でどのような質問がきても、適切に対応できる受け答えの訓練になります。

ロープレは、新卒の営業マンや中途入社の営業マンも交えて行うとより効果的です。新人にとって勉強になることはもちろん、ベテラン営業マンも新人の意外なリアクションや他業界出身の営業マンのトークに刺激を受けて、自分のトークを見直すきっかけになるからです。

営業は初回か2度目の訪問時にどのように説明をできるかで、お客様からの評価が決まってしまいがちな仕事です。貴重な機会をムダにしないためにも商談シーンの予行演習が必要です。

アプローチで必要な営業テクニック

ここでは、営業の新規アプローチに活用できる営業テクニックを4つ紹介します。いずれも有名なテクニックですが、どのテクニックがどのような場面で使えるかは、状況や担当者の個性によって異なります。相手を見極めながら活用しましょう。

ザイアンスの法則

「単純接触効果」とも言われます。簡単に説明すると「人は何度も接触した対象に対して好意を持つ」という効果です。よく知らない営業マンよりもまめに顔を見せる営業マンを信頼したり、初めて見る商品より広告で何度も目にする商品を購入したくなる心理です。

同じ能力の営業マンなら、提案したきりでフォローしない営業マンより定期的にフォローする営業マンをお客様は信頼します。ルートセールスの営業マンが成果を上げるのは、ザイアンスの法則にのっとって言えば理にかなっています。お客様と接触する回数を増やしましょう。

  • 何度も訪問したり、連絡をする
  • 役立つ資料を定期的に送る
  • メルマガで情報を発信する

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン

オープンクエスチョンとは、回答の幅や内容を相手にお任せする質問です。クローズドクエスチョンとは「はい、いいえ」で回答しやすい質問です。同じ内容でも下記のように後半の言い回しを変えるだけで、2つの質問方法を使い分けることができます。持論を展開してくれそうなお客様か、答えやすい質問をしたほうがよいお客様かを判断して使いましょう。

オープンクエスチョンの例:

  1. 「他社のお客様はAやBのような問題点をお持ちの方が多いのですが、御社はどのような問題点をお持ちですか?
  2. 「現在お取引をなさっているC社さんとはDのような課題があると伺いましたが、次に取引先を変更するタイミングではどのようなことをお望みですか?
  3. 「御社の前期の業績のプレスリリースを拝見しました。素晴らしい営業利益ですね。部署としては前期、いかがでしたか?

クローズドクエスチョン例:

  • 「他社のお客様はAやBのような問題点をお持ちの方が多いのですが、御社もそのような課題はおありでしょうか?
  • 「現在お取引をなさっているC社さんとはDのような課題があると伺いましたが、次取引先を変更するタイミングでは、Dの課題を解決することが最優先でしょうか?
  • 「御社の前期の業績のプレスリリース、拝見しました。素晴らしい営業利益ですね。部署としての数字もかなり上げられたのでしょうか?

両面・片面提示

両面表示とは漢字のとおり物事の両面、つまりメリットもデメリットも提示するテクニックです。片面表示はメリットのみを全面に出して伝え、あえてデメリットを伝えない手法です。

片面表示を好む営業マンは「聞かれてもいないのにデメリットを伝える必要はない」という考えを持っているかもしれません。しかし、両面表示を好むお客様は多く、片面表示だと不誠実で信用ならない営業マンと思われることもあります。どんなに優れた商品・サービスでも100%のお客様が満足することはないからです。

昨今は、営業マンに営業されなくとも製品のスペックや使い心地のレビューなどはインターネットでいくらでも探せます。だからこそ、営業担当者が持っているお客様に合った成功事例や失敗事例やなどを、両面提示として隠さずに伝えると好まれるでしょう。

課題を抽出する力

営業マンには課題を抽出する力が必要です。2012年のリクナビNEXTの調査では、営業職が「絶対不可欠スキル」だと思うスキルの1位は「課題発見力」です。そもそも課題を合意しなければ、いかにコミュニケーション能力やプレゼン力があっても提案が的外れになることを多くの営業マンは知っています。

営業に必要だと思うスキル調査

出典:リクナビNEXT

お客様の本質的な課題を掴むには営業マンに質問力が必要ですが、新人営業マンでスキルがまだあまりない場合は、他社の課題解決事例をいくつか提示して、お客様が興味を持った事例の課題に沿ってヒアリングしていくとよいでしょう。

なお課題の捉え方は、担当者が一般社員、課長クラス、部長クラス、経営者かなどの立場によっても変わります。担当者が「費用対効果の良い製品を導入したい」と言ったとしても、上司である課長は「取引中の企業より費用を20%抑えられるなら導入しても良い」と考えているかもしれません。20%削減された予算で契約すると商品によっては利益が出ない可能性もあります。早めに決裁権限のある人(キーマン)の本音を聞き出すことも意識しましょう。

商談(クロージング)で必要な営業テクニック

ここでは、商談のクロージングの際に使うことのできる4つのテクニックを紹介します。

営業提案資料の作成テクニック

営業提案資料は紙で見てもらうか、パソコン画面やタブレット画面を見せながら説明するかで、適切な文字量やレイアウトが異なります。画面上で見てもらう場合は文字を入れすぎると読みづらいので注意しましょう。

営業資料には、他のお客様が商品・サービスを使うことで、どれだけ数字が改善したかの事例があると説得力が増します。競合他社にもアプローチを受けている会社への営業資料であれば、「A社、B社、C社、D社の比較」といった長所短所を記載した比較表を差し込むとさらにわかりやすくなります。

  • PC画面で説明するときは文字を少なくして商談時に詳細を説明
  • 図やグラフを差し込んで数字を視覚的に表示
  • 成功事例を盛り込む
  • 他社との比較表を入れる

プリフレーム

プリフレームとは、商談の前にあらかじめ枠を設定する話術のことです。要するに商談の「目次」をあらかじめ提示することです。

例:

  • 本日はお時間いただきありがとうございます。

     ↓

  • 最初にわたくしから〇分ほどご説明させていただき、

     ↓

  • その後に〇分ほどお話を聞かせていただけますでしょうか?

     ↓

  • 最後に〇分ほど弊社製品を紹介する動画をご紹介させていただければと思います

といった話し方だと商談の順序が分かっているので、聞く側も「ここの説明がいつまで続くのだろう?」と考えずにすみますし、自分が話す時間までに感想、質問をまとめることもできます。

SPIN営業話法

SPIN話法とはお客様にそれまでとは違った視点をもってもらったり、より深く課題を把握してもらうためのヒアリング話法で、大型案件ほど効果を発揮すると言われています。SPINは4種類の質問の頭文字を取っています。「Sは状況」「Pは問題」「Iは示唆」「Nは解決」です。

  • 状況質問(Situation Question):クライアントの課題を把握する初期段階の質問
  • 問題質問(Problem Question):課題をつかみ深掘りをするための質問
  • 示唆質問(Implication Question):課題の重要さや課題が悪化することの危機をイメージしてもらう質問
  • 解決質問(Need-payoff Question):課題を解決する方法を真剣に考えてもらう質問

SPIN話法について、より詳しく知りたい場合は「SPIN営業話法とは?契約に直結する商談でのヒアリングのコツ」の記事をご覧ください。

ハロー効果

ハロー効果とは、目立つ一つの特徴が全体の印象に良い影響を与えることです。例えばApple社は、これまで発売した数々の先進的な製品が会社のブランドイメージを作りました。そのためAppleが発表する新製品は常に注目されます。これも一種のハロー効果です。

営業テクニックとしては「大手A社でも導入してくださっています」「自治体のCにも利用いただいています」など官公庁、大手企業などが使っていることを伝えると、その実績だけで「それなら信用できるだろう」と思ってもらえる効果が期待できます。

ミラーリング効果

ミラーリング効果は、人間の「類似している人を好む」という特性にもとづいたテクニックです。例えば、出身地が同じであったり、音楽やスポーツの趣味が同じだったり、犬が好きか猫が好きかなどの好みが一緒だと、人は相手に親近感を感じやすいのです。

BtoCの営業マンなら、お客様のご自宅に訪問した際、楽器やスポーツ器具などから自分と同じ趣味を持っているとわかった場合はその話題を出すと話が弾むかもしれません。BtoBのビジネスシーンではプライベートな話題に入ることは失礼にあたることもあるので、ミラーリング効果を活用するならば、言葉のリズムやスピードを合わせることを意識しましょう。

電話や対面で相手がゆったりとしたトーンで話をしている場合はこちらも話すペースをゆったりとする、相手がテキパキと話すシーンではこちらも快活に話をすると好感を持たれやすいでしょう。「気があう」「息があう」という言葉があるように、相手と呼吸を合わせるだけでも人間関係はスムーズに進みます。

※ミラーリング効果には動作をマネするという方法もありますが、ビジネスシーンでは露骨すぎると反感を持たれる可能性があります。

商談後のフォローで必要な営業テクニック

商談後のフォローで使うことのできるテクニックを2つ紹介します。

商談後のお礼メールを送る

商談後にはお礼メールを送りましょう。内容は商談の議事録ですが、詳しすぎる必要はなく、ポイントをまとめたメールで十分です。

メールは受信ボックスに残るため、商談時にお客様のニーズがない段階であっても、検討のタイミングが来た際に再開封して見直される可能性があります。初回訪問でニーズがなさそうだなと感じても、必ずお礼メールは送る習慣をつけましょう。

お客様の課題に合わせた情報提供

商談後は、商談で引き出したお客様の課題に寄り添うような情報を提供します。ヒアリングした内容を踏まえて、お客様にお役に立てる情報を選別し、メールで送付します。

メールで送付しておけば「メールをお送りしたのですが、見ていただけましたか?」と、電話をするきっかけにもなります。真剣に検討中のお客様には早めに電話をし、しばらくニーズが発生しそうにないお客様にはメールでの情報提供のみおこなうなど、お客様によって距離感は調節します。

情報提供を続けていると訪問せずとも徐々に信頼関係が構築されていくので、次に新しい企画を案内する際にアポイントがとりやすくなるでしょう。

営業テクニックを身につけるためには

心理学に基づいたトークや動作の営業テクニックは、まずできる範囲で実践してみて、手応えのあるものや使いやすいものから覚えていきましょう。なかには業界の営業スタイルやお客様の個性や自分自身の性格にあまり合わないテクニックもあるはずなので、実践した後に振り返りを行い改善していくことが大切です。

例えば、コーチングの世界では、人のタイプを以下の4種類に区分しています。

コーチングの4タイプ

参考:Hello, Coaching!

コントローラータイプの営業マンにとっては、クローズドクエスチョンを駆使して相手から「YES」を引き出しながら話を詰めていく手法は簡単でも、サポータータイプの営業マンには心理的抵抗があるかも知れません。

分析が得意なアナライザータイプの営業マンは、事前準備を徹底した上で「プリフレーム」を活用して商談を理路整然と進めることができるかも知れませんが、プロモーターの特性が強い営業マンだと話しながらどんどんアイデアが出るので、プリフレームが意味をなさないかも知れません。まず、自分の個性を把握しましょう。

自分の営業スタイルがわからない場合は上司や先輩・同僚にロールプレイング相手になってもらい、その様子を動画に撮影して見直すとよいでしょう。1人ロープレでも構いません。「自分はこんなに早く喋っているのか……」「主張するより相手に合わせる傾向があるな……」「意外と話が飛ぶタイプだ……」など気付くことが多いはずです。

営業テクニックは知識として頭の中に入れるだけでなく、ロールプレイングで練習して本番の商談にのぞみ、振り返りを行いながら磨いていくことが大切です。

まとめ

心理学などの研究結果が出ている営業テクニックは、営業など仕事のシーンだけでなく、日常生活の人間関係構築にも役立ちます。自分が伝えたいことを正確に伝えられるようになると、さまざまな個性の人とのコミュニケーションがスムーズになっていくでしょう。

営業マンとしてある程度の実績を上げている人にも、自分にはテクニックが足りていないと自覚している人、新人や後輩を指導している立場の人にとっても、営業テクニックを学ぶことはかなり役立ちます。営業部門内で営業テクニックにもとづいたトークスクリプトを作成すると、部門全体の営業力アップにつながるはずです。

セールスハックスでは、営業マンに必要な基本スキルをチェックできる「営業スキルチェックシート」を用意しております。まず、自分の営業マンとしてコミュニケーション力、提案力をチェックしてみましょう。

    営業スキルチェックシート

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