営業戦略立案の会議で検討するべき5つのポイント

営業戦略

作れば売れた時代は終わり、現在はものが飽和している時代です。消費者は買う際に選択肢が増え、売り手となる企業はますます営業が難しくなっています。「頑張ってもなかなか売れない」という状況は、どこの会社でも共通の課題でしょう。そこを突破するために、従来の営業方針を変え、戦略に沿った営業を行うという企業が増えているようです。

これはとても良いことですが、「戦略を立ててもうまくいかない」「現場が指示通りに動かない」といった別の問題が発生しています。今回は、「そもそも営業戦略とは何か」から始め、「どうしたらうまく機能するか」といった具体的アクションプランまでを考えたいと思います。それでは始めていきましょう。

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営業戦略とは何か?

営業戦略とはそもそも何でしょうか?類似の言葉の「戦術」と何が違うのでしょうか?多くの企業が誤解されていることが、「戦略」という言葉の意味です。

一般的には、「戦略=何をするか (what to do)」、「戦術=どうやるか (How to do)」と考えられていることが多いです。

「戦略」とは、そもそも何をするのかを決めることでしょうか? 通常、アプローチ先を1つのターゲットに絞り込んだり、提供商品・サービスを絞り込むことが考えられます。きちんと戦略が定義できれば、逆に何をしないか (=何を捨てるか)もクリアになります。この両面が、明確にならないものは戦略ではありません。

例えば、顧客A, B, Cに対して、営業リソースを全面に平等にアプローチをするというのは、戦略とは言えません。顧客を選択 (=捨てる あるいは 諦める顧客を選ぶ) していないからです。

一方、戦術とは戦略をどう実行するかです。つまり、こちらは寧ろ複数の選択肢があることが普通です。例えば販売方法であれば、訪問、電話、通信販売と選択肢があります。そして、戦術は色々試していき、最適なものを選択する活動です。

目標と営業戦略を定める

ここではさらに、目標と戦略の関係を説明します。目標と戦略は同じものではありません。目標とは「達成したい姿」と言い換えても良いかもしれません。

例えば、売上げ100億円を目指すといったものです。通常、会社のトップが決める数字、トップから降りてくる数字が目標です。目標は数字だけではありません。例えば、米Amazon.comの「地球上で最もお客様を大切にする企業になる」やプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社の「世界の人々の、より良い暮らしの為に (必要な企業であり続ける) 」といったVISIONやMISSIONも目標と言えます。結局はどこを目指すのか、というものが目標です。

企業は通常、その企業が存在する意義 (=企業理念)があり、それを達成するために、売上げや利益といった具体的な数値目標が必要になります。企業理念は、「会社としてどうするか=what to do」を決める通常長期的なものであり、数値目標は「それぞれの部署がどうするか」を決める通常短期的なものになります。

つまり、戦略会議で決める1つ目は「目標は何か」を明確に定義することです。

今回の営業戦略は多くの場合、ある数値目標等を達成するために、営業部がどうするかを決めるものと言えます。

自社の強みを分析する

それでは、目標を達成する為の「営業戦略」をどのように作っていくか見ていきます。1番最初にやるべきことは自社にとっての強みは何かという点です。通常、ある製品やサービスを売っていく事を考える場合に、その製品やサービスを売っている他の会社が存在します。

目標を達成するには、この競合と戦って勝たなくてはなりません。目標レベルによって、どの程度勝たなければならないかは異なります。大きな数値目標の時には、勝ち越さなくてはいけません。数字次第で勝率は半分で良いかもしれません。あるいは、市場に新規参入した時には当然その市場で勝った経験はありません。そのため、今後勝ち続けるために勢いやモチベーションを上げるためにも先ず1勝することが最重要であることもあります。

いずれにせよ、目標を達成する為には「勝つ」事が必要です。そして、競合と戦って勝つには競合に対して、自社が相対的に有利な点 (=強み) で戦うしかありません。間違っても相手の強みの領域で戦ってはいけません。

自社の強みが何かを知り、その強みが生かせるように戦うことが必要です。強みとは、企業の資産、企業文化、商品性能、価格など様々なものがあります。

戦略会議で決める2つ目は「自社の強みは何か」を明確に定義することです。

しかし、強みを検討する際に以下のような意見を聞くことがあります。

そもそも「自社の強み」が分からない

このケースの場合は意外に多いと思います。なぜ売れているか分からないという状況です。そういった場合には、買って頂いている顧客層の分析から強みの仮説を立てることを始めると良いと思います。そして、後に詳しく述べますが顧客自身に聞いてみるのも一つの手です。もちろん、この際に自社の仮説が予めあると尚良いです。

② 自社の強みと思い込んでいるが実際には他社と差がない

例えば、②の例として、某電力会社が自社の発電設備は莫大な投資をしなければ参入できず、大きな障壁となっており、この発電設備こそ我が社の強みであると考えたとします。しかし、この電力会社の競合は、おそらく別の電力会社であり、同じ様な発電設備を持っています。

もちろん、相手が某自動車会社とした場合には、設備は強みになりますが、電力を売る場合には自動車会社は通常競合になりません。大切な点は、自社が売る商品の競合に対して、何が強いかを見極めることです。安易な発想に飛びついてはいけません。

そこで一番良い方法はお客様に聞くことです。何故、自社製品を買ってくれるかが、選ばれる理由であり、自社の強みです。聞く以外にも販売地域、購入者の情報 (性別、年齢、収入、職種等)から、特定の顧客に多く売れているという点が見つかるかもしれません。もし見つかれば、何故かを突き止めるべきです。そして、その答えが自社の強みとなるはずです。

ターゲットを特定する

強みが把握出来たら、次はその強みを最も発揮できる顧客を特定することです。いわゆるターゲティングが必要です。強みが発揮できる顧客に絞ることで、顧客にあった提案を行うことができるため勝率も上がり目標を達成することができます。具体的には、顧客対応のスピードが強みである場合、フットワークが軽いことや要求事項に直ぐに応答することに価値を置いている顧客を狙うのが良いでしょう。

戦略会議で決める3つ目は「ターゲットは何か」を明確に定義することです。

顧客を絞ることは、市場の母数を減らすことになるため多くの企業は嫌います。しかし、顧客を捨てずに全顧客に対して営業を行おうとすると勝てません。その理由は、「勝てる領域は自社の強みが生かされる市場のみ」という基本を忘れてしまうからです。

例として下の表を見ながら考えてみましょう。

仮に全市場(A市場)が50億円で、自社の強みが生かせる市場(B市場)は10億円だったとしましょう。A市場での勝率と後者での勝率は、B市場の方が必ず高いはずです。この場合には、A市場の勝率が10%、B市場は80%だとしましょう。結果、市場での売上げは、A市場5億円、B市場8億円となり、市場を絞った方が結果的に上がります。

仮に、A市場の勝率が20%だったら(A’市場)、論理は逆転すると考える方もいるかも知れません。

しかし、全社を相手にする (顧客を絞らない) という事は、自社の営業リソースを拡散させることになり、顧客との結びつきやニーズ対応、カスタマーサポートは手薄になります。結果として、市場を絞らない場合には実行の際の対応量が非常に多くなり、勝率は極めて低くなります。多くの場合、実現は困難なことが多いでしょう。

これは逆を考えるとよく分かるのですが、競合会社が戦略で絞った会社に対してリソースを投下すれば、競合はその顧客に対する勝率はあがります。そこに自社の手薄な営業リソースをつぎ込んでも勝てません。勝てない市場に投入したリソースは無駄になります。その為に、勝てない市場は捨て、自社のリソースを掛けない、勝てる市場にのみリソースを全投下することが大切です。この理論はマイケル・ポーター氏の「選択と集中」としてよく知られています。この様に、何をやるか (戦略)を決めることはリソースを無駄にしない為にも非常に重要です。

ここまでの内容を以て、「戦略を決定する」ことが戦略会議で決める4つ目の事項です。

現場に落とし込みやすいようにフォーマット化する

戦略が決まったら、後はそれを営業マン全員が理解できる様にフォーマット化することが大切です。どの顧客層に、何をして、何をしないかをしっかり明確化しましょう。

全員がこの戦略を理解して、実行できるような環境を作ることが大切です。もし、戦略を決めたにもかかわらず、戦略外のことをしたら (捨てた顧客にリソースを割く)、戦略の確認・もしくは軌道修正の為の指示をしなければなりません。

よくあるのが、戦略で決めた顧客は要求が厳しいので、自社にやさしい あるいは担当と関係が出来ている戦略の対象外の顧客を訪問したりすることです。これは、戦場で言えば命令違反なので軌道修正の為の指示をしなければなりません。

仮にそこで営業成果をあげても、結果は認めても、最後には必ず軌道修正しなければなりません。売上げが上がったのだから、という理由で、こういった戦略外の行動を認めてしまえば、誰も戦略に従おうとは思いません。戦略を愚直に実行させる、戦略外の行動は成果が伴っても軌道修正することを基本としましょう。これを繰り返せば、営業マンたちは戦略に自然に従う様になるはずです。

それに加えて、何が戦略に沿った行動なのかを明文化して、アクションプランを作ると営業マン全員が共通の理解に役立てることができます。実行の中で必要なKPIを決めておくと、営業マンの行動管理が精密に行うことができるため、なお良いでしょう。KPIの例として、「戦略に沿った顧客への訪問回数等」があげられます。KPIを確認することで、自社営業マンの戦略実行度も明らかになります。

戦略会議で決める5つ目は「戦略が実行できる環境を作る」ことです。

まとめ

今後も続く厳しい市場の中で勝っていくには、戦略の策定が必要です。戦略の策定は自社が目指したいゴールに対して、「何をするか=what to do」を決めることです。

今回は、自社の強みを明確にし、どのような顧客層にアプローチしていくのかという話をメインでしました。BtoCならば、どの年代、性別、どの様なライフスタイルを狙うかが重要になります。自社の強みやターゲットの顧客層を明確化し、戦略を決めれば捨てる顧客が分かります。強みを生かせる顧客のみに、営業リソースを投入すれば勝率は必ず上がります。

後はこれを自社の営業マンに徹底させるために、戦略外の行動の叱責、戦略的な行動とは何か、戦略上のKPIは何かをアクションプランとして落とし込めば、競合に対する勝率は上がり、目標達成に大きく近づけるはずです。

しかし、戦略を落とし込んで現場に徹底的に実行させることは、なかなか大変であることも事実です。そこで、「デジタル時代の「売上げ拡大戦略と実行」ガイドブック」では、自社の戦略の決定から現場の実行までを支援する解説とフレームワークを紹介しています。是非ご覧ください。

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