経営者が知っておくべきインサイトセールス(営業)とは?

インサイト 営業

さまざまな情報がインターネット上に溢れるこの時代。知りたい時にインターネットで検索をすれば、欲しい情報を受け取れるのが当たり前になりました。その中で、営業現場にも変化が生じ始めています。

今までは「自社の課題を把握しているが解決策がわからず模索している顧客」が多く、ソリューション営業の必要性に溢れていました。しかし今の顧客は、自社の課題のみならず、インターネットで情報を調べ解決策も把握しています。そのような顧客には、従来のソリューション営業では通用せず、営業成績が上がらず悩んでいる営業マンもいるのではないでしょうか。

その中で生まれた新しい営業手法「インサイトセールス」。顧客が気付いていない課題を見つけることで、顧客に感動と新しい気付きを提供します。その結果、顧客から信頼され営業成績を伸ばし続けることができます。

本記事では「インサイトセールス」がどのような背景で誕生したのか、また実行する上で、どのようなことが必要かをお伝えします。

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インサイトセールスとは

インサイトセールスとは、お客様のインサイト(内面)に注目し、お客様自身が気付いていない課題・ニーズを見出し、解決へと導く営業手法です。このインサイトセールスは、2014年7月に発刊された「Diamond Harvard Business Review」の『もはやセールス・マシンでは通用しない ソリューション営業からインサイト営業へ』にて紹介され、注目を集めました。

なぜソリューション営業からインサイト営業へと、世の中の営業マンが注目する内容が変わったのでしょうか。それはデジタル技術の発達が大きく関係しています。

① インサイトセールス(営業)が必須になった背景

従来の顧客は自らの課題・悩みは把握しているが、その解決方法がわからず悩んでいるという状況が多々ありました。それはインターネットが発達しておらず、自ら情報収集をすることが難しい状況だったからです。

そのため特定の分野(不動産や電子機器など)に精通し、幅広い知識・経験と、提案方法を持つ営業マンが重宝されていました。その時期は「自社・自分の課題解決方法を提案してくれる営業マン」が優秀であり、顧客に求められました。

しかしインターネットが発達しインターネット上には情報が溢れ、お客様自身が検索することで欲しい情報を取得できるようになりました。

平成29年総務省が発表している情報通信白書の「ビックデータ利活用元年の到来」によると、2016年時点で我が国の総ダウンロードトラフィックは10年前と比較すると約10倍にも膨れ上がっております。

総ダウンロードトラフィック

世界のトラフィック推移をみても、BtoC業界・BtoB業界ともにトラフィック量は右肩上がりに増加しています。

世界のトラフィック推移

また、ウェブ部が実施した、「BtoB情報収集調査」では、「企業受けIT製品・サービスのフェーズ別の情報収集源」のTOP3がインターネット、SNSを通じた情報収集の方法でした。

このようにインターネット上ではBtoC・BtoBに問わず、課題解決のための情報が溢れ、顧客自身が課題解決のための情報を自ら取得できるようになりました。そして検索エンジン上でも「ソリューション営業」の検索数が、2004年から2010年まで調べられる件数が多かったものが、徐々に右肩下がりに減少しています。

「ソリューション営業」の検索数

② インサイトセールス(営業)の重要性

では、なぜインサイトセールスが注目を集めているのでしょうか。顧客自身が課題解決のための施策や予算、他社事例など必要な情報を取得できるのであれば、営業マンは必要ないとも言えます。

実は、顧客の中には誤った課題設定をしてしまったり、解決策を試してみたものの上手く改善しきれていない場合もあり、顧客が気づいていない本質的な課題を抽出することが、現在求められています。それがインサイトセールスなのです。

多くの企業や担当者は「目の前の事象」を把握し、「自身の経験則のもと原因(課題)を想定」しているだけなのです。そもそもこの想定した原因(課題)が間違っていたら、いくら頑張っても事象は解決できません。そのため彼らが見いだせていない課題を特定することに価値があり、顧客に喜ばれるのです。

インサイトセールス(営業)の基本戦略

インサイトセールスにおける基本戦略とは、「顧客が課題と認識する前にアプローチする」ことです。顧客が課題と特定してしまってからでは、顧客は課題解決に対する価値を感じることがなくなり、ただの価格競争に陥ってしまいます。

顧客が施策決定するまでの流れは、以下のようになります。

  1. 最初に目に見える事象が発生し、危機感を感じます。(売上が下がっている、離職率が高まっている、リピート率の減少など)
  2. 「なぜその事象が起きたのか?」という課題特定を行います。
  3. その解決策のリサーチをします。その中で「どんな施策があるのか、どれくらいの予算をかけ、どれくらいの効果が見込めるか?」を把握します。
  4. さまざまな業者をから話を聞き、比較検討をします。

従来のソリューション営業では「課題が特定され、会社として準備が整った状況」にアプローチすることが求められていました。

しかし、現代では顧客自身がリサーチし、場合によっては営業マンよりも豊富な情報を持っていることもあり、顧客によっては提案依頼書(RFP)が用意される場合もあります。そうなっては、顧客が想定している予算よりも下げて提案するほかありません。

この状況を脱するためには「課題を特定する」前に顧客と接点を持つことが必要です。どんな企業でもそれぞれが考えた課題を想定していますが、その課題ではなく、顧客自身が見出せていない・気付いていない課題を見出し気付きを提供するのです。そうすれば顧客自身は新たな課題への知識も、解決策に関してもリサーチできておらず、営業マンの価値が高まります。

インサイトセールス(営業)のスキル

では、顧客の気付いていない課題を見出すインサイトセールスに必要なスキルとは何でしょうか。必要なスキルは「変化する可能性があるお客様を重視する」「お客様のニーズを再定義する」「会社の前向きな変革を考えている人を見つける」「購買の方法を顧客に指導する」の4つです。1つずつソリューションセールスとインサイトセールスを比較していきながら紹介します。

ソリューションセールスとインサイトセールス

①「変化」する可能性があるお客様を重視する

従来のソリューションセールスでは、顧客が抱える課題解決のための解決策の提案を行ってきました。そのため、「課題が特定されているが解決策を見つけられていない」または「購買プロセスが明確になっており、提案が納得いただけたら契約完了までスムーズに進む顧客」がよしとされていました。

しかしインサイトセールスでは、上のような顧客にアプローチするのは危険です。前述したように課題を特定している場合、顧客自身が情報をたくさん収集しているため価格競争になりやすくなります。

それよりもインサイトセールスでは、「変化」する可能性があるお客様を重視しましょう。インサイトセールスでは顧客が想定している課題(原因)ではなく、彼らが気づいていない課題を見出し提示します。その課題の根拠が明確で、論理的であるはずなのに顧客が動いてくれないと何も始まりません。

今までの営業活動の中で、顧客の調整スピードが遅く苦労した経験はありませんか?どんなに素晴らしい戦略や企画を立案しても、実践しなければ意味がありません。今までの歴史ややり方に固執するあまり、変化に対応しにくい企業もあります。そのような企業にアプローチすると、課題解決のための企画や実行でなく、社内調整のための根回しやプレゼンなどに時間が割かれてしまいます。そのためインサイトセールスでは、「変化」する可能性があるお客様を重視しましょう。

② お客様のニーズを再定義する

ソリューションセールスでは、顧客の抱える課題を解決するために「自社の商品・サービスがどのように役に立つか?」を見出し、提案していました。顧客が想定した課題をゴールとし、自社商品・サービスによりどう解決ができるかを逆算していくのです。そのため営業現場では、ヒアリングを通して自社商品・サービスが入り込めるきっかけを探していました。

しかし、インサイトセールスでは「顧客が想定した課題」をゴールとせず疑わなければなりません。時には顧客が話す課題(原因)を鵜呑みにせず、顧客が困っている事象からヒアリングしなおすことが必要です。それは顧客が想定しただけの課題(原因)であるケースが往々にしてあるためです。

先入観を持たない状態でヒアリングを行い、本当に解決すべき課題を見出す必要があります。ヒアリングの結果、見出した課題が自社商品・サービスで解決できないことがあるかもしれません。しかし私たちが行うべきことは、「無理やり自社商品・サービスを売り込むこと」ではなく、「顧客の真の課題を解決すること」です。目的を見誤らず、本当に顧客のためになる提案を行いましょう。

仮にその課題が自社商品・サービスで解決できなかったとしても、顧客の信頼は獲得できます。自社のために考え抜き、自らが見出せなかった課題を提示してくれる営業マンと縁を切りたい担当者はいるはずもありません。課題が発生するたびに相談され、アドバイザーのような立ち位置を構築することができるでしょう。

③ 会社の前向きな変革を考えている人を見つける

ソリューションセールスでは顧客の抱える課題を自社商品・サービスで解決できるストーリーを描くために、顧客の情報が必要になります。当然社外の人では取得できない情報も多々あります。その時に有力な見方になるのが、社内の情報を提供してくれる支援者です。彼らは営業マンが相談すると、快く社内の情報を提供してくれます。様々なタイプの人がいますが、総じて「話好き」の人が多い傾向にあります。営業マンにはとても魅力的な人に見え、交流を密にしてしまいがちです。

しかしインサイトセールスではそのような人にアプローチすべきではありません。「ソリューション営業は終わった 調査が明かす新たな営業アプローチ」によると、そのような人は購買の意思決定プロセスに入っていることが少なく契約締結に与えるインパクトは小さいのです。

インサイトセールスでアプローチすべき相手は、会社の前向きな変革を考えている人です。前述したとおり、ゴールは「顧客の抱える課題を解決する方法を提示すること」ではなく、「顧客がネガティブな事象を解消すること」です。そのため「人に情報を提供すること」に喜びを得る人ではなく、「本当に会社をよくしたい。そのためには変革も必要だと思っている」人に協力してもらう必要があります。

彼らは本当に会社をよくしたいと思っているからこそ、あなたの提案に時には厳しい意見や質問をしてきます。ただ、それは会社をよりよくしたいと思う気持ちからです。その意見や質問に対して、適切に対応・回答していくことで信頼を得られ、協力を得られるようになります。

そして彼らは「会社をよくするため」に高いモチベーションを持ち、社内のキーマンにアプローチしたり社内調整を進んで行ってくれるはずです。

④ 購買の方法を顧客に指導する

ソリューションセールスでは顧客が決めた購買プロセスに沿って、案件を進めることが多くあります。しかし、インサイトセールスでは、営業マンが購買方法を顧客に指導しましょう。それは新たに見出した課題に対しては顧客よりも、その課題を見出した営業マンのほうが精通しているからです。

提案可能な幅が広ければ広いほど、商品・サービスを販売することが困難ですが、顧客も同様です。顧客も選択肢が多ければ多いほど「どの商品・サービスを購入すべきか?」に悩みます。現在の顧客は数多くの情報、サービスが混在しており、どの情報を信じ購入すべきかを悩んでいるため、購買の方法を指導しましょう。なぜ提案する営業マンが購買の方法を教えるのか。それは、営業マンが多くの成功事例を知っているからです。

まとめ

営業マンであれば、インサイトセールスのスキルは取得しておきたいものです。ただ、インサイトセールスは、顧客も気付いていないインサイト(本質的な課題)を発見し、提示するという難易度の高い営業手法でもあるのも事実です。

しかし、お客様のインサイトのヒントはお客様の中にあります。毎日多くのお客様と一番密接に関わりを持つ営業マンは、そのヒントを獲得する機会は多くあると言えます。一件一件の営業アプローチをさらっと終わらせるのではなく、「今のお客様は潜在的にどのような課題を感じていたのか」または「アプローチしている中で共通する課題は〇〇かもしれない」といった分析をしつつ営業アプローチを行っていくと顧客理解に繋がるはずです。

営業スキルチェックシート」では、営業活動で必要な営業スキルをまとめています。インサイトセールスを行っていく上でも必須なスキルを挙げていますので、ぜひご覧ください。

    営業スキルチェックシート

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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