「新規開拓したいのに時間がない……」「会議が長すぎる……」「なぜ、営業マンがこんなことに時間を取られるんだ……」と、営業マンの悩みは尽きません。
実際、日本の営業現場が非効率であることは各種調査でも指摘されていますし、営業マンたちも自覚しているようです。おそらく、現在のムダな業務を50%削減するだけでも、かなり生産性は上がっていくのではないでしょうか?
本記事では、売上げを拡大するために営業業務を効率化するステップを解説していきます。
営業業務効率化とは
営業業務の効率化とは、文字通り営業活動を効率よく進めるために業務を改善することです。ムダな業務を削減するだけでは効率化に限界があるため、環境に合わせて最適な営業フローを設計したり、必要があればITツールを導入することも行います。
営業業務効率化の目的は売上げを最大化することです。そのために、営業マンが本来すべき仕事にエネルギーを集中できる仕組みを作り続ける必要があります。
- 営業マンの本来の仕事:お客様との商談、コミュニケーション
- 付随する業務:提案書・見積書作成、契約書類作成、契約締結、関連部門とのミーティング、日報作成、社内会議、移動、交通費精算、接待、他。
もちろん、営業マンはお客様に徹底して合わせなければならいことも多く、社外業務の効率化は難しい面もあるでしょう。しかし、働き方改革が進むなか経団連が2017年に取引業者への無理な要求を控えることを含めた「共同宣言」を出しているなど明るいニュースもあります。 時間もかかると思いますが、「働き方改革」「業務効率化」という大義名分で、これまで非常識だった慣行が是正しやすくなる方向に向かっています。
参考:経団連
さらに、コロナウィルス感染症対策のため緊急事態宣言が解除されても、当面営業マンに「とりあえず来てくれ」というケースは減るはずです。大手企業でもハンコ文化を電子認証に変える動きがあります。契約書、NDAの法的チェックを営業部で完結できるツールも登場しました。2020年は大変厳しい時代であるものの、営業部門が業務の効率化に着手するベストタイミングかも知れません。
なぜ営業業務効率化が大切なのか
ここでは、なぜ営業部門の業務効率化が大切なのかについて、具体的に解説します。
営業本来の仕事の時間を確保する
営業マンの本来の仕事は、売上げを上げることであり、売上げを上げるためには少しでも多くお客様とコミュニケーションをとる時間を確保する必要があります。1日8時間の中でいかに商談を増やし、それ以外の業務にかける時間を減らせるかが勝負です。
ところが、前述のとおり、日本の営業マンは営業以外の業務にかかる時間が多すぎて営業業務が非効率になっています。
- 営業マンに聞く「社内で最も非効率な部署」は?営業/販売が第1位
- 「働く時間の25.5%はムダ」と営業担当者が回答。年間約8,300億円の経済損失
- 小売店訪問営業マンの顧客との面談時間:1日3時間、生産財営業マン:2.5時間
このようなムダな時間を削減し、仮に営業マン一人あたり1日1件でも商談数が増えれば、営業マン10人の企業なら単純に(稼働日20日×12カ月×10名)で、年間約24,00件の商談が増えることになります。新しい営業マンを2~3名採用するのと同じくらいの成果が期待できることになるのです。
働き方の多様性による評価方法の変化
2019年からの働き方改革推進、2020年のコロナウィルス感染症の影響もあり働き方は多様化しています。営業マンが在宅で営業する日も増えていくでしょう。オンライン商談では営業マンの移動時間がないため、商談数が増えることが期待できるのは良いことです。
しかし、同じフロアにいればどれだけ一生懸命電話をかけていたか、どれだけ商談をこなしていたのかが何となくわかっていたのですが、在宅ワークとなると営業プロセスを細かくみることができません。在宅ワークになると成果評価(パフォーマンス)がより一層大切になってきます。
成果で評価するといっても業務フローが明確に言語化されていないと、新人や中途入社社員などが業務の流れがわからず能力を発揮できない可能性があります。これは決して平等とは言えません。スタートラインでもう差がついているからです。
多様な働き方を実現するには、営業業務を徹底的に効率化して営業ワークフローとして言語化しておく必要があります。
よくある営業業務で効率化できるシーン
営業業務で効率化ができるありがちなシーンをいくつか紹介します。
営業アプローチ前の事前準備に時間がかかっている
初めてお会いする前に、お客様はどのような業界なのか?どのようなビジョンを掲げている企業なのか?担当者はどのような人なのか?を調べることは大切です。ある程度把握しておかないと、ヒアリングのポイントを外して話が弾まないまま面談が終わってしまうかもしれません。できれば事前に抱えているニーズや課題の仮説まで立てておきたいものです。
しかし、仮説はどこまでいっても仮説なので時間をかけすぎてもムダです。検索サイトやSNSで収集できる情報は限られていますが探そうと思えばいくらでも時間がかかってしまいます。例えば、「この件は10分でリサーチする」と時間を決めて、時間内で可能な限り情報を収集して仮説を作ることが大切です。
営業アプローチの連絡手段がワンパターン
営業マンによって得意なアプローチ方法があると思います。電話アプローチが得意、メールでのアプローチが得意、直筆の手紙で成果を出すなど個性はさまざまだと思いますが、今は一つのアプローチ方法にこだわっているとなかなか相手とつながりにくい時代です。
電話受付をアウトソーシングしている企業、全員在宅ワークで会社支給のスマホが連絡手段になっている企業も増えています。電話をして出なければ留守電のメッセージを残して、フォローメールを送る、電話をする前にメールを送っておく、SMSで連絡するなどマルチチャンネルでアプローチしていくことが大切です。
お客様の年代、電話が主流だった時代とインターネット、スマホが当たり前の時代では好まれるコミュニケーションスタイルも異なります。総務省の以下のグラフを見ると、今の20代にはメールよりもSNS連絡が好まれるかもしれません(青:ソーシャルメディア、紫:メール)。お客様に合わせて複数のアプローチ手法を柔軟に組み合わせましょう。
参考:総務省
見積もりや契約書の作成・手続きに時間がかかっている
見積もりや契約書作成も、お客様それぞれに合わせなければならず時間がかかります。重要な業務ではありますが、かなりの部分は過去に経験した業務です。毎回エクセルなどで作り直すのではなくフォーマット化したり、自動的に作成できるクラウドツールを使うと便利です。
電子捺印などを導入することで毎回紙に印刷 → 相手に渡して → 捺印してもらって返事を待つ → なかなか返送がこなくてやきもきする……といったやりとりをなくすことができます。その場で注文書をもらえるようになれば、営業マンもお客様も業務をスッキリと断捨離でき時間、郵送コスト、ストレスを減らすことができるでしょう。 ハンコ文化については営業マンだけでなくビジネスマンの多くがムダだと思っているので、営業マン側から電子契約を提案してもよいかもしれません。
営業会議が長引く
定例会議などで、一人ひとりが結果や進捗について発表すると会議が長引きます。朝9時スタートの会議でも、営業マンはもし会議が長引いたらと思うと、最初のアポを11時ではなく遅刻しないように午後1時にするでしょう。
長い定例会議が慣習となっている企業では、会議のある日の営業マンの商談数が1~2件少なくなっている可能性もあります。月1回くらいならよいかもしれませんが毎週行っている場合、営業マン一人あたり月4件のアポが減ることなります。営業マンが10人の会社なら年間で480件の商談が減ると試算できます。もったいないことです。
株式会社ジェイアール東海エージェンシー と株式会社マクロミルが2016年に行った調査では、企業の会議1回あたりの平均所要時間は68.2分。業績が伸びている企業は会議の回数は多いものの会議のスタイルが多彩であり、業績が“下降”している会社は、会議時間が目立って長く、1日あたりの回数も多いという結果が出ています。
もしかしたらタイム・イズ・マネーの意識が薄いのかもしれません。会議は事前に論点を決め、終了時間も明確にして、予定時刻に必ず終わり、営業マンが業務にとりかかれるようにしましょう。
引用:「ビジネスパーソンの『社内会議』に関する調査」 – 株式会社ジェイアール東海エージェンシー
営業の業務効率化を行うステップ
営業現場には課題が多く、業務効率化といっても何から手をつけてよいか迷ってしまいがちです。ここでは、実際に営業の業務効率化を行う4ステップを解説します。
Step1. 現状の営業業務を振り返る
まず、現状の営業業務を営業フローとして振り返って整理してみます。営業マンからヒアリングもしましょう。さまざまな課題が出てくるはずです 。
例):
- 「営業リスト作成に長時間かかっている」
- 「オンライン商談のアポがなかなか取れない」
- 「メール作成に時間をかけすぎる営業マンが多い」
- 「テレワーク主体になるとWebの印象が重要なのでトップページを改定してほしい」
- 「2回目のコンタクトをとる際に、提供できる事例がほしい」
- 「もっとオンライン上で広告宣伝してほしい」
課題解決をするためには、原因を正確につかむことが大切です。例えば「新規アポの数が増えていないこと」が課題だとしても、アポ取りをしている時間がないのか?営業リストが枯渇しているのか?単にアポ取りが苦手な営業マンが多いのか?など理由はさまざまだからです。原因を特定していったんすべてに仮の対策を立てます。
Step2. やるべきこと、やらなくていいことに分類する
次に、その中で売上げに直結するやるべきこととやらなくていいことに分類します。「自社がすぐ行うこと」「計画的に行うこと」「行わないほうがいいこと(できないこと)」というように整理します。100%を実行することは難しいので、列挙した上で社内でできることや外注すればできることなど、実行可能な打ち手を絞っていきます。
例):
- すぐに行うこと:
・トークスクリプト、メールテンプレート作成
・見込み客リスト作成
・営業導線の構築
・成果事例を増やす
・オンライン商談用スライド作成
・ウェビナーの種類を増やす
・Webトップページ改定
・問合わせフォーム改善(オンライン面談、無料トライアル、メール返信の3択に) - 計画的に行うこと:
・Web用DL用コンテンツ(e-book等)の作成
・企業Blogの立ち上げ
・メールマガジン配信
・営業マンの個別教育
・ITツールの導入 - 対応可能なら行ったほうがよいこと:
・営業マンのSNS発信
・営業マンのnoteでの発信 - 行わないでよいこと:
・訪問営業(とびこみ営業)
・展示会の企画・出展
・DMの印刷
・FAXDM(回数を1/5程度に減らす)
Step3. やるべきことに対してのアクションプランを立てる
次に、やるべきことに対しての今後のアクションプランを立てます。誰が(どの部署)が、何を、どのレベルまでいつまでに行うかを決定します。プロジェクトチームを組んで最終期限も設定します。例えば、すぐできることは1ヶ月以内、中長期計画は半年くらいで完了する計画のもと課題ごとに期限を決めていきます。
例):
内容・担当者ごとに期限を決めることがとても大事です。2回目のミーティングで一人でも「忙しくてまだ進められていません……」「いやなかなか大変でまだ時間がかかります……」という調子になると、プロジェクト全体が前に進みません。期限を決めることでPDCAを回すことができるのです。
Step4. 必要に応じて営業支援ツール活用又は外部に委託する
アクションプランの中で、人が手動で行うと時間がかかっても営業支援ツールなどITツールを使えば自動的にできることはないか確認します。今は外資系、国内系の各ベンダーがさまざまなツールを出しています。シンプルなツールを営業活動の一つのフェーズのみに活用しても、新規アプローチから成約までの一連の流れをスムーズにするために統合的なツールを活用してもよいでしょう。
出典:Cold Call: 65+ Companies Transforming The Sales Tech Landscape-CBINSIGHTS
代表的な営業支援ツール活用例:
- Web上問い合わせ対応→チャットボットで
- 営業リスト→自動作成ツールorアウトソーシング
- 見込み客創出→MA(マーケティング・オートメーション)で
- 展示会→Zoomでオンラインセミナー
- 訪問営業→オンライン商談ツールで
- 手書き日報→営業日報アプリ
- 契約→押印・プリントなしの電子契約
- SFAで営業活動支援
- CRMで顧客情報管理
営業支援ツールには1カ月無料お試し期間があるサービスが多いので、プロジェクトチームでいくつか選定し、1ヶ月使用した結果を営業マンにヒアリングし、成果に結びつくか検証して採用を決定するとより安全です。
なお、営業支援ツールを試しながら営業フローを構築してもよいのですが、基本的な順番は1. 営業業務フローの設計 → 2. 営業支援ツールの選定です。順番が逆になると営業マンの作業がかえって増えることもあるため注意しましょう。
営業マンのやるべき仕事に集中する
営業マンのするべき仕事とはお客様とのコミュニケーションであり、課題解決のための提案です。お客様とのコンタクト数が売上げに直結することは、コロナ以前も以降も変化はありません。
しかし、広告宣伝の手法、アプローチの手法は非常に多彩になっていきます。
例えば、これからの時代にはアポを取る前の第0印象の影響もポイントになってくるため、SNSやBlogから営業マンが発信することで信用度を高めることも効果的です。しかし、これは営業マンがマーケティング領域の仕事に踏み込み、ますます多忙になるということでもあります。
営業マンに本来の仕事に集中してもらうためには、会社側が営業業務で自動化できる事務業務などを極力自動化して、営業マンの時間を増やす仕組みを構築することが必須です。
営業マンの側も指示待ちではなく、現場から発信することが大切です。特にコロナウィルス感染症のような前代未聞の出来事がおこりビジネス環境が一変する時は、前例がないため、会社の経営者も営業マネージャーも外部コンサルタントも精度の高い予測はそうそう出せません。
むしろ、日々、現場でお客様の課題に直面している営業マンのほうが変化に即したアイデアが出しやすいはずです。営業マン自身が何をすべきかを考え、営業業務の効率化や新しい営業フロー作成に積極的に意見を出したりプロジェクトに関わりましょう。結果、自分が動きやすくなるだけでなく、その経験が成長につながり、ビジネスマンとしてのキャリア形成上大きなプラスになるでしょう。
まとめ
2020年は営業のパラダイムシフトが起きている年だと言えます。「訪問=基本」から「訪問しない=基本」とビジネススタイルが180度変わる勢いです。お客様の商談の捉え方が変われば、営業スタイルを変化させざるをえません。
同じ営業活動でも対面とオンラインではだいぶ勝手が異なります。相手への印象、必要とされるスキルも多少変わっていきます。営業活動をオンラインにそのまま移行する感覚で現場に丸投げしてしまうと不具合が出てくるので、早急に新しい営業フローを構築していきましょう。
仮に、コロナウィルス感染症が完全に消滅した場合でも、元のスタンスに戻る企業もあれば、テレワークの効率性を知って対面よりオンライン商談を好むお客様も増えるはずです。営業フローを一新するというよりバリエーションを増やすと言ったほうが適切かも知れませんが、業務効率化を進めることで対面営業、オンライン営業のいずれでも成果が出る体制を整えられるでしょう。
「営業マンの営業活動をより楽にする 営業シーン別 営業自動化のヒント」では、営業活動で感じるお悩みに合わせて営業の自動化の方法について解説しています。自動化の仕組み作りのヒントになりましたら幸いです。