営業の無駄をトヨタ式で見直す7つの改善方法【前半】

トヨタ式 営業マン 無駄

自ら営業アプローチ先を探し、営業の提案を行い、商談から契約後の顧客対応までやる。厳密に営業活動を分業している企業でない限り、営業マンの業務範囲は幅広く、非常に忙しいのではないでしょうか。

達成するべき営業目標は決められ、時間は限られているのに目の前のやるべきことに追われて、やりたいことまで手が回らないことも多いと思います。やりたいことをできるようにするためには効率化が必要です。

常に業務やプロセスの見直しを行っている企業の代表が、トヨタ自動車株式会社です。カイゼン(改善)は英語の単語にもなっており、製造業だけでなく、幅広い業界でその考え方が取り入れられています。

改善することにおいては、営業現場では顧客というコントロールし難い外的要因の影響を受けることは確かです。そのことから「なんでも経験することはいいことだ!」と無駄について甘くなりがちです。また、結果がすべての世界なので、プロセスを改善していく風土も希薄かもしれません。

一度立ち止まって無駄を見直すと、短期間では些細な改善かもしれませんが、長い目で見たときに大きな差が出ます。

本記事では、営業の現場でカイゼンを当てはめて効率化するポイントについて解説していきます。

営業の無駄①: 加工の無駄

日々の営業活動で必要以上に取り組んでしまっている業務はありませんか?業務は、やろうと思えば1つの業務に何時間もかけることができます。しかし、抱えている業務は1つだけではないはずです。

どの仕事にどのくらいの労力や時間をかけて取り組むか、どのくらいの完成度までもっていくのかなど事前に把握しておき、業務の達成基準を設定しましょう。

チェックポイント例

  • 話しやすい、気が合う顧客に何度も電話をしている
  • 電話や訪問前の準備作業に時間をかけすぎている
  • 資料作成、メール作成に時間をかけすぎている
  • 社内資料に手間をかけすぎている

改善方法

各アクションや業務の前に、「本当に必要な作業かどうか」「それだけの労力と時間を使ってまで行うべきかどうか」をもう一度自分自身に問いましょう。客観的に判断できない時は、上司や同僚の意見も聞いてみてもよいでしょう。

また、ひとつひとつの作業の目的と重要な点を明確にすることも大切です。通話記録などのデータベースを定期的に確認したり、各取引の時間やプロセスを見直したりすることで効率化に向けてムダをあぶり出すことができます。

メール作成には意外と手間と時間がかかるものです。メールのテンプレートを作って効率を良くしたり、要件によってメールと電話をうまく使い分けたりしてみましょう。

営業の無駄②:手待ちの無駄

営業活動は、自社の関係者や顧客、顧客の関係者などさまざまな人との連携が必要になります。他者との連携の中で、よくあることとしては、顧客や関係者での確認で業務が止まってしまうことです。連絡が来るまで待っていなくてはいけません。

顧客に催促をすることはなかなか気が引けると思いますので、顧客との連携の中でできる限り負担をかけないような依頼方法を意識することで、効率よく連携を進めることができるようになるかもしれません。

チェックポイント例

  • 金額提示後の顧客の社内承認を待っている間、取引が止まってしまうことがある
  • 取引の流れがスピードダウンしたり、予定していたステップが遅れたりすることがある
  • 顧客がメールを読んだかどうかがわからず、次のアクションを取るのを待つことがある
  • 部下が報告書を書くのを待ってから、指示や指導をしている

改善方法

手待ちの時間を減らす努力は大切ですが、どうしても少なからず手持ち時間はできてしまうものです。そのため、事前に手持ち時間で何を行うのかを決めておきましょう。アプローチリストの整理でも、提案資料の作成でもよいので同時並行で進められる業務を決めておきましょう。

あるいは、顧客からの連絡を待っている間にこれからの営業の流れをイメージしたり、今後必要となりうる連携についても想定し、迅速な対応ができるように、準備しておくことで効率よくコミュニケーションを進めていくことができます。

メールの開封やリンクのクリックを確認できるITツールを活用すると、顧客の反応をみることができ、返信がなくても待たずに連絡をすることができます。

営業の無駄③:つくりすぎの無駄

トヨタ自動車では、必要な物を、必要な時に、必要な量だけ供給するJIT(Just In Time)方式を確立しており、経費の削減と効率の向上を極限まで追求しています。

これを営業活動に当てはめると、まだ顧客は課題や価値を感じていないのにアポイントを獲得したり、目標数以上のコール数をかけているのに結果として全くキーパーソンと話せていないということが挙げられます。

このようなことに多いことは、数は多くやっていてやり切った感はあるものの、成果を振り返ってみると向上が見られないということが見受けられます。

チェックポイント例

  • コール数に満足し、結果的にはキーパーソンとは話せていない
  • アポイント獲得率の達成のために、無意味なアポを設定している
  • 契約件数のノルマ達成期限のために、利益率の悪い取引を行っている

改善方法

「最終的に結果として求められていること」を常に頭におきましょう。

数字が増えるとうれしいものですが、結果として目標を達成していなければ意味がありません。むしろ非効率になってしまう可能性もあります。「自分が求められている結果はなんなのか」「何を目指すのか」を明確にした上で、自らのKPI(重要業績評価指標)達成に向かって取り組んでいただければと思います。

場合によっては、期限やKPIを見直すことも必要です。例えば、コール数やアポイント獲得率をKPIとしていたものを「商談化率」に変更をすることで、商談化しやすいアポイントの獲得を意識するようになります。結果的に、無駄なアポイントを減らすことができ、効率よく有効商談数の増加が見込めます

営業の無駄④:不良・手直しの無駄

営業活動でも「質」は大切です。電話営業のトークの質、商談のプレゼンの質、提案資料の質など、どの質も常に高めていく必要があります。

もし、電話営業トークの質が悪ければ、顧客に価値を感じてもらえず、直接会う機会も得ることができません。また、提案資料が雑に作られていれば、「この営業マンは雑な人なのかな?」と思われてしまい信頼を獲得できない可能性もあります。

チェックポイント例

  • 準備不足で商談にのぞんでしまっている
  • 初回の商談でキーパーソンが参加できることを確認していない
  • 顧客がおおよその価格を把握できる資料を用意していない
  • 毎回同じ内容の営業トークをしている

改善方法

質の良し悪しは実際に課題感を感じないとわかりづらいものです。もしうまくいっていないと感じたら、その原因の特定と対応策の決定をできるだけ早く行い、次のミスにつながらないようにしましょう。

特に経験の浅い営業マンの場合であれば、成果をあげている営業マンが「どのくらいの質の提案を行っているのか」「提案資料で何を伝えているのか」などヒアリングしたり、営業の同行をさせてもらって実際に体感することも大切です。

まとめ

営業マンは、さまざまな業務に取り組まなくてはいけませんが、本当に注力するべき業務は営業活動で売上げをあげることです。それ以外の業務は、やらなくていいわけではありませんが、売上げを生む活動に最大限時間を割いていくように効率化する必要があります。

本記事でご紹介したポイントを参考にして、ぜひ本日からの業務の効率化をはかってみてください。

後半は、「運搬の無駄」「在庫の無駄」「動作の無駄」の3つの無駄について紹介します。

営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》」では、営業部門全体でムダを見直し、効率化を図る営業ワークフローの標準化手法を紹介していますので、参考にしてみてください。

    営業ワークフローと営業ツール標準化《実践ガイド》

原誠

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