他社比較を行う際に有効な5つの方法

他社比較 方法

営業やマーケティングで成果を出すには、他社との差別化を図ったり、優位性を確立することが重要です。そのために不可欠なのが他社比較です。

今回の記事では、他社比較を行う際に有効な5つの方法を詳しく解説します。他社比較の重要性や比較結果の活用方法も解説しますので、営業担当者はぜひ参考にしてください。

他社比較とは

「他社」とは、自社と同じ事業を行っている他の会社を意味します。一方で「比較」とは、二つ以上のものを互いに比べ合わせて、あいだにある類似点や相違点などを洗い出すことです。

つまり、他社比較とは、自社と同業他社を比べることで、似ている部分や異なる部分を洗い出す行為のことを指します。特に経営戦略を策定する目的で他社と比較する場合は「競合分析」とも呼ばれます。

ただし実務においては、ただ単に分析するだけでは不十分です。分析結果を踏まえて、自社の営業施策の改善や新しい施策の策定などを行うところまでが他社比較になってきます。

他社比較がなぜ大切なのか

次に、他社比較が重要と言われる理由を2つご紹介します。

他社との差別化を図るため

他社比較が重要である最たる理由は、他社との「差別化」を図るためです。

差別化とは、他の企業と異なる商品・サービスを顧客に提供する形で競争優位性を築く経営戦略です。同じ商品・サービスを提供する同業他社と差別化を図らなければ、顧客から見て自社の商品・サービスを選ぶ理由がありません。そのため、より知名度のある企業や安く提供する企業に利益を取られてしまいます。

実際に日本のデジタル家電業界は、技術力があったものの商品間の差別化が図られていなかったために、より安く商品を提供する中国企業との競争に負けたと言われています。

以上より、長期的にビジネスで利益を獲得するには、他社との差別化により顧客から進んで選ばれるような商品・サービスを提供することが不可欠です。差別化できれば、価格競争に巻き込まれたり競合他社に顧客を奪われるリスクを軽減できるでしょう。

ただし、自社と競合他社の間にある相違点や類似点を明確にしないと、何が差別化になるかを認識しにくいです。そのため他社比較は、差別化の方向性を明確にして、長期的な優位性を確立する目的で行います。

自社に足りない部分を補うため

他社比較は、自社に足りない部分を補うという観点でも大切です。営業やマーケティングで成果を出すには、差別化だけでなく他社の優れた施策や戦略を自社に取り入れることも重要です。例えば、他社がExcelなどのツールを使って営業の生産性を高めているならば、自社もその施策を積極的に取り入れるべきでしょう。

このように、自社の戦略や施策を改善するために、他社の優れた部分を取り入れる手法を「ベンチマーキング 」と呼びます。ベンチマーキングを行えば、優れた成果を出している企業の施策を自社に導入することで、営業の効率性や収益性を高める効果が期待できます。

ただし、ベンチマーキングで自社に足りない部分を補うには、自社の現状と他社の現状を比較し、自社が取り入れることができる施策を洗い出す必要があります。そのために、今回お伝えしている他社比較が不可欠というわけです。

他社比較を行う前に自社を分析する

自社がどのような会社か明確でないと、比較元がないため他社の分析を的確に行えません。従って、他社比較の実施に先立って、まずは自社の市場内におけるポジションや、基本的なマーケティング戦略を明確にする必要があります。

自社の分析をあらかじめ行えば、自社の分析結果を指標に用いて、他社との比較を行いやすいというメリットを得られるでしょう。自社の分析に際しては、STP分析や4P分析のフレームワークが役立ちます。

STP分析

STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)という3つの要素からなるフレームワークです。STP分析は、最も効果的に商品やサービスを販売する方法を洗い出す目的で活用します。すでにビジネスを行っている企業を分析すれば、効果的な施策を実施できているか、しっかり差別化がなされているかを確認できます。

STP分析で自社を分析する際には、まずセグメンテーションを行います。セグメンテーションとは、市場を特定のニーズを持つ複数のグループに分けるプロセスです。年齢や性別、地域といった基本的な分け方だけでなく、ライフスタイルや価値観といった心理的な基準で分類することもあります。

次に、細分化した市場の中から、どこの市場に対して商品・サービスを販売するかを決めるターゲティングを行います。自社の強みを活かせるグループや、長期的な収益性を見込めるグループにターゲットを定めるのがベストです。自社の分析にあたっては、現時点で「強みを活かせており、長期的な収益性を見込めるか?」という視点でターゲットの妥当性を確認しましょう。

最後に、ターゲット市場における自社の立ち位置を明確にする作業(ポジショニング)を行います。価格競争や顧客の奪い合いを避けるためにも、自社のポジションは競合他社と被っていない状態が好ましいです。

以上3つのプロセスにより、自社のマーケティング施策における強みや弱み、課題、特徴を明確化することが、質の高い他社比較を行う上で重要となります。

4P分析

4P分析とは、マーケティングの根幹を構成する「製品(Product)」、「価格(Price)」、「物流(Place)」、「販売促進(Promotion)」という4つのPを分析するフレームワークです。4P分析は、「どのような商品を、どのような価格・流れで販売し、それをどのように消費者に知ってもらうか」を決める上で役立ちます。

自社分析においては、自社の商品や価格、商品の提供プロセス、販売促進の施策を把握する目的で活用します。ただし、単純に4つのPを把握するだけでは不十分です。4P分析では、4つの項目に一貫性があるかどうかを確認するのが大切です。

例えば、価格が商品の品質に釣り合っていない場合は、顧客から使用してもらいにくいため、価格を下げる・品質を高めるといういずれかの改善が求められます。4つのPに一貫性があってはじめて、お客さんからの需要を得られます。自社分析では、4つのPに一貫性があるかを必ず確認しましょう。

4P分析

他社比較を行う際の5つの方法

他社比較を行う際には、「競合の明確化」→「比較項目の明確化」→「情報収集」→「フレームワークの活用」→「商品やサービスの購入・使用」という5つの方法を順番に駆使して進めます。この章では、他社比較で用いる5つの方法を分かりやすく解説します。

自社の競合を明確にする

まず行うのは、自社の競合を明確化することです。他社比較の精度を高めるために、最低でも3〜4社以上の競合をピックアップするのが望ましいです。なお競合を明確にする際には、直接競合だけでなく間接競合の存在にも注意が必要です。

直接競合とは、自社と類似する商品やサービスを取り扱う競合企業を意味します。一方で間接競合とは、自社の商品やサービスの代替品となる商品・サービスを取り扱う企業です。言い換えると、市場( 顧客 )が自社と同じ企業が間接競合となります。

例えば、安い値段で食事を楽しめるファミリーレストランの場合、直接競合は他社が運営するファミレスや同じ価格帯で食事を提供する飲食店となります。一方で間接競合は、安い値段で食事を購入できるコンビニやファストフード店が該当するでしょう。

直接競合のみを対象に他社比較を行うと、間接競合への対応が不十分となり、知らないうちに自社の顧客を奪われる事態になりかねません。他社比較の実施に際しては、必ず間接競合も比較の対象に含めるようにしましょう。

比較項目の明確化

やみくもに情報収集を行うと、不必要な情報までも収集してしまい、営業やマーケティング施策の改善・差別化に役立つ情報の見分けがつかなくなるおそれがあります。そこで、自社の競合だけでなく比較する項目もあらかじめ明確化するのが望ましいです。

比較する項目を検討する際には、「どの情報を比較すれば、営業やマーケティング施策の改善や差別化につながるか?」という視点を持つのが重要です。この視点を持つことで、役に立たない情報までも収集するリスクを軽減できます。

主な比較項目には下記が挙げられます。

  • 商品・サービスの4P(品質・デザイン・品揃え、価格、流通経路、販売促進の方法)
  • 保有する経営資源の量、種類、強み、弱み
  • 知名度や評判
  • オペレーションに関する内容(接客方法、営業時間、店内の人数など)

ただし業種や市場(顧客)などの要因により、比較すべき項目は異なります。従って、必ず経営者やマーケター、営業担当者が自ら考えた上で比較項目を明確にするのが重要です。

情報収集を行う

比較する項目を明確にしたら、実際に他社の情報を収集します。情報収集の手段は、公式ホームページや商品・サービスの説明資料、口コミサイトなど多岐にわたります。情報収集にあたって重要なのは、収集する情報の種類や市場などの要因により、最適な情報源が異なる点です。

例えば、商品の価格や品揃えなどは、ホームページや商品・サービス資料から簡単に収集できます。一方で知名度や口コミなどは、他社ホームページや商品・サービス資料よりも、SNSやインタビューといった手段が適しているかも知れません。情報収集に際しては、収集する情報の種類や顧客の特性などに応じて、最適な手段を使いましょう。

また、複数の会社に対して複数の項目にわたる情報を収集するため、データの量は膨大となります。ただ雑然とデータを集めると、後から行う自社との比較が面倒になりかねません。チェックリスト形式の調査票を使うなど、データをみやすく管理するのも大切です。

実際に購入・活用してみる

調査する項目や商品次第では、WebサイトやSNSなどでは十分な質・量の情報を集められない可能性もあります。状況に応じて実際に他社製品を購入・活用するのも一つの手です。

実際に商品を購入すれば、ご自身で他社製品・サービスの使い勝手を体験できます。そのため、インターネットや商品・サービスの資料のみを参考にする場合と比べて、より鮮明に自社との違いを明確にできる可能性があります。

ただし、BtoB向けや高額な商品・サービスだと、実際に購入して使用するのが困難なケースもあります。また、コストや労力も要するため、あくまで状況に応じて実施するかどうかを決めるようにしましょう。

フレームワークを活用する

情報収集を終えたら、フレームワークを活用して収集したデータの分析を行なっていきます。他社比較では、主に「3C分析」、「5フォース分析」、「SWOT分析」という3種類のフレームワークが活用されます。以下では、それぞれのフレームワークを詳しくご説明します。

3C分析

3C分析とは、「市場(customer)」、「競合(competitor)」、「自社(company)」というCから始まる3つの単語の頭文字をとったフレームワークです。3C分析では、市場や競合、自社の分析を行うことで、競合他社の優位性や顧客のニーズを見極めたり、自社の差別化戦略を考える目的で活用します。

3C分析では、まず市場の分析を行います。市場に関しては、主に以下の項目を分析します。ただ単に分析するのではなく、過去から現在・将来に向けての変化の度合いや傾向を捉えることが重要です。

  • 規模
  • 成長性
  • 政治や経済による影響
  • 顧客に関する情報(ニーズや属性など)

次に、競合他社の分析を実施します。競合分析では、主に以下の項目を分析します。基本的には、前述した情報収集のプロセスで得られた情報をまとめる作業となります。

  • 競合他社の数
  • 競合他社の経営資源の強みと弱み
  • 競合他社の業績
  • 競合他社の業界内でのポジション
  • 競合他社の商品の特徴
  • 競合他社の販売手法や戦略

最後に、自社の分析を行います。自社の分析では、主に以下の項目を分析します。こちらも、前述した自社の分析で得られた情報を詳細に分析する作業です。

  • 自社の経営資源の強みと弱み
  • 自社の業界内でのポジション
  • 自社の業績
  • 自社の商品の特徴
  • 自社の販売手法や戦略

自社の分析まで終えると、自社と他社を比較した場合の強みや弱み、差別化できる部分、顧客に提供できる価値などが明確になるでしょう。

3C分析

5フォース分析

5フォース分析とは、「業界内の競合」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」という、業界に影響を与える5つの力( force )を分析するフレームワークです。5つのフォースの力関係を分析することで、業界の収益構造や参入した場合の収益性(魅力度合い)を判断できます。

業界内の競合とは、業界内における競争の激しさを意味します。一般的には、同じ規模の企業がたくさん存在すると、競争が激しくなります。競争が激化するほど闘う相手が多いため、その市場の魅力度合いは低いと言えます。

新規参入の脅威とは、新しく市場に参入する企業を意味します。新規参入の頻度や数が多いほど、競争が激化しやすく魅力度合いは低いです。基本的に、参入障壁が低い( 誰でも手軽に始めやすい )業界ほど、新規参入の脅威が大きいです。

代替品の脅威とは、その業界で提供する商品・サービスと同じ価値を、顧客に代替品がもたらす脅威のことです。既存製品と比べて少ないコストで同じ便益を得られる代替品が現れると、既存製品を販売していた企業は顧客(売上)を奪われてしまいます。従って、代替品が現れにくい市場の方が好ましいです。

売り手の交渉力とは、自社製品の原材料を販売する売り手の交渉力です。売り手の交渉力が強い業界ほど、仕入れ価格が高まることで利益率が低下する傾向があります。主に、売り手の数が少ないケースや、売り手の持つ技術やスキルが希少であるケースで、売り手の交渉力が高まります。

買い手の交渉力とは、自社製品を購入するお客さんの交渉力です。買い手の交渉力が強いほど、値引きなどに応じざるを得ず、収益性(売上)が減りやすいです。主に、買い手の数が少なかったり、自社のブランド力が低いケースなどで、買い手の交渉力は高まります。

How competitive forces shape strategy

(出典:Porter, M. E. 1979. How competitive forces shape strategy. Harvard Business Review, 57(2): 137-45, p. 141.)

SWOT分析

SWOT分析とは、「強み( Strength )」「弱み( Weakness )」「機会(Opportunity)」「脅威( Threat )」という4つの項目を整理することで、自社の内部環境とそれを取り巻く外部環境を分析するフレームワークです。SWOT分析は、他社比較により自社の経営やマーケティング、営業の戦略を見直したり、新しい市場に参入する際の戦略策定で用いられます。

具体的には、まず市場の成長性や経済状況、競合度合いなどを分析し、分析結果を「機会(ビジネスにとってプラスとなるチャンス)」と「脅威(ビジネスにとってマイナスの影響を与えるピンチ)」に分類します。次に、競合他社と自社を比較することで、自社の強みと弱みを整理します。

そして最後に、分析結果を踏まえて以下4つの戦略を考えていきます。

  • 強みを活かして機会を掴む戦略
  • 強みを活かして脅威を最小限に留める戦略
  • 機会を損なわないように弱みを克服する戦略
  • 弱みが原因で脅威による被害が大きくならないようにする戦略
SWOT分析

他社比較の結果をどのように活用するか

前述した通り、他社比較では分析のみならず分析結果を実際の実務(営業やマーケティングなど)に役立てる必要があります。他社比較の結果は、主に「商品・サービスの改善」や「営業活動の改善」に活用するのが一般的です。

商品・サービスの改善

他社比較の結果は、商品・サービスの改善に大きく役立ちます。商品・サービスを改善する際には、他社比較により判明した自社の劣っている点や、差別化できる部分を考えることが重要です。

劣っている部分を改善すれば、自社よりも優れた商品・サービスを販売する競合に顧客を奪われるリスクを軽減できます。差別化を実現すれば、価格競争や顧客を奪われるリスクを減らせると同時に、付加価値をつけて商品やサービスを販売し、より大きな利益を得られるようにもなります。

例えば、スターバックスは、おもてなしや居心地の良い空間の提供といった独自の価値を提供することで、単純においしいコーヒーを提供するカフェとの差別化を実現し、後発企業ながら根強いファンを多く獲得することに成功しています。

スターバックスの例からも分かる通り、成熟した市場でも差別化された商品・サービスを提供すれば、高い付加価値を実現できます。そのような差別化を実現する上で、他社比較の結果を商品・サービスの改善に活かす戦略は極めて有効です。

営業活動の改善

他社比較を行うと、自社と他社の商品・サービスにおける性能やコンセプトなどの違いを明確にできます。電話やメールによる営業や商談の際に自社と他社製品の明確な違いを説明すれば、相手方に自社の商品・サービスがどのようなものかをイメージしてもらいやすくなります。

また、自社商品・サービスの持つ優れた点も明らかになるため、見込み客に対して効果的な営業アプローチが可能となります。見込み客に自社製品の魅力を理解してもらえれば、より商談の成約率や成約件数も増やすことができるでしょう。

まとめ

他社と自社の差異や類似点を明確にする「他社比較」は、差別化の方向性を明確化したり弱みを補強する上で重要な施策です。

他社比較は下記5つの方法を順番に実施する形で行います。ただし比較に先立って、STP分析や4P分析などのフレームワークを駆使して自社がどのような会社かを分析しておきましょう。

  1. 競合の明確化
  2. 比較項目の明確化
  3. 情報収集
  4. フレームワークの活用
  5. 商品やサービスの購入・使用

上記5つの方法により他社比較を行ったら、その結果を商品・サービス、営業活動の改善に活かさなくてはいけません。上手く改善できれば、収益性や商談の成約率などを大幅に高められるでしょう。

なお、商談の成約率を高める際に参考にできるように「営業スキルチェックシート」を用意しております。営業スキルチェックシートには、見込み客の開拓から案件獲得までのプロセスで重要なスキルがチェックシート形式で掲載されていますので、ぜひご覧ください。

    営業スキルチェックシート

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