デジタル営業とアナログ営業どちらが有効か

営業 デジタル

昨今は「足で稼ぐ営業は古い…」「今どき飛び込み営業なんて…」という意見をメディアやSNSなどでよく見かけるようになりました。確かに今は、Web上のチャットで営業マンやボットが対応したり、オンライン商談ツールを使う企業も少しずつ出てきているなど、営業という仕事はかなりデジタル化しつつあります。

背景にあるのはインターネットやスマートフォンの普及です。今のお客様は営業マンに会う前にまずネットで検索しSNSなどで評判を確かめます。消費者の購買パターンがAIDMA(認知→興味→欲求→記憶→行動)からAISAS(認知→興味→検索→行動→共有)というプロセスに変化しているため、企業側もデジタル営業に力を入れるようになってきたと言えます。

そのため、営業マンと接触する以前のフェーズに力を入れる企業が増え、Webマーケティングやインサイドセールス、SNS営業なども増えつつあります。インサイドセールスにおいては、外資系、IT業界、人材サービスなどの一部企業が導入し始めた段階ですが、Web上の求人を自動的に収集する求人サイト「Indeed」で確認するとすでに約2000件ほど求人が出ています

しかし、まだまだBtoB市場の専門的な商材などについてはアナログ営業が中心です。営業マン、営業管理職の方も関心はあっても「デジタル営業にシフトしたら、今年度の売上げが伸びるのか?」「どのタイミングでどの部分に導入するとベストか?」など、現実的な成果が気になるところだと思います。

本記事では、デジタル営業とアナログ営業それぞれの有効性、メリット、デメリットについて解説します。

デジタル時代の営業スタイルのガイドはこちら

アナログ営業とは

アナログ営業とは、デジタルを使わず営業マンが直接お客様のもとに出向く訪問営業や紹介営業のことを指します。いわゆる御用聞き的な営業から提案営業(ソリューション営業)までスタイルはさまざまですが、基本的にお客様を訪問して会ってコミュニケーションを深めていきます。

  • 自社や商材の紹介のための訪問
  • 情報提供、課題把握のための訪問
  • 情報交換のための訪問
  • 近くまでよったのでご挨拶、担当者変更のご挨拶

など、アナログ営業では商談以外でも何かしら理由を見つけてお客様のところに通うことがよしとされる傾向があります。一昔前は「夜討ち朝駆け」と言われるように、なかなか会えないお客様(中小企業経営者等)に会うために、朝方や夜などお客様が会社に立ち寄る時間を待ち構えて訪問する営業マンも存在しました。

アナログ営業には紹介営業という手法もよくとられます。保険、不動産、自動車などの高額な商材はお客様にも「信頼できる人から買いたい」という心理が働きます。一度営業マンが信頼を得ると連鎖して紹介がもらえる可能性が高いため、BtoC営業では特に有力な手法です。有望なネットワークを見つけるために、さまざまなコミュニティに参加し人脈づくりに励む営業マンもいます。

BtoB営業でもエリア担当の営業マンが地域内でお客様の人脈をつてに営業したり、社長自ら業界団体、商工会議所などに参加しコミュニティ内人脈をもとに営業し売上げを上げているケースがあります。紹介営業を上手に活用できればテレアポ、飛び込みなどの新規開拓手法を上回る成果を出すことが可能です。

アナログ営業がなぜ大切か

なぜ、アナログ営業は古いと言われながらもいまだに行われているのでしょうか?もちろん慣習もありますが、実はアナログ営業はムダが多そうでありながら、メリットもあるからです。

アナログ営業のメリット

ここではアナログ営業の強みを紹介します。

アナログ営業の強み

対面でのコミュニケーションの強さ

営業マンも、ショッピングの際に店に入って販売員と目が合って会話を交わすとつい断りにくくなったり、買ってあげたい気持ちになることがあると思います。人間は対面した相手に心を開く傾向があるそうです。

何かを依頼したときの効果はメールより対面が34倍
ザイオンス効果(人は接する回数が増えるほど相手に好印象を持つ)

売る側のノウハウを知っている営業マンすら相手のニコニコした誠意ある対応につい応えたくなるので、相対した時のいわゆる「返報性の法則」はかなり強力なのです。

お客様にとっても安心感がある

お客様側にも「営業マンと会う」メリットはあります。高額な商材を買うときや、長期の取引を始める際には、商品だけでなく企業の社風、コンプライアンスの意識、フォロー体制などをチェックしないとBtoCなら不安ですし、BtoBなら上司から「担当者のチェックが甘い」と言われかねません。

仕事のこだわり加減(満足度のレベル)、スピード感などは会社ごとに意外に違います。営業マンに訪問してもらうと、Webに書かれている表面的な情報だけではわからない自社との相性などを、営業マンという人間を通して判断することができるのです。

2019年にHubSpot Japan株式会社が行った「日本の営業に関する意識・実態調査」では、営業担当者の訪問を希望するお客様は全体の70.6%にも上ります。理由の一位は「誠意」を感じるというものです。

合理性、効率性という観点だけでアナログ営業を否定するのは早計かもしれません。

リアルタイムでお客様のニーズに対応することができる

例えば、朝のニュースで「外資A社が日本に進出」「〇〇業界の再編があった」という情報を見たときに、アナログ営業マンなら速攻でアプローチすることが可能です。エリア担当の営業マンなら、新オープンの店舗を見つけたらすぐ飛び込み営業したり、工事段階からアプローチすることもあるでしょう。

既存のお客様に対する営業であっても、まめに訪問する営業マンは、お客様から見れば何かあったらすぐ相談したり、頼んだりできる存在です。アナログ営業にはリアルタイムでお客様のご要望に対応することができる強みがあります。

ITが苦手な決裁権者(キーマン)へのアプローチに有効

企業経営者や部長クラスなど大きな予算の決裁権を持っている方は、大企業だと50~60代です。中小企業の社長だと70代の場合もあります。中高年層はITについて詳しくない場合も多いので、アナログ営業は少なくとも向こう数年は有効だと言えます。

昭和の「24時間戦えますか?」という価値観で生きてきた経営者や中高年層の中には、多少積極的なアナログ営業をする営業マンを「骨がある」と評価する方もいます。

アナログ営業のデメリット

とはいえ、アナログ営業のデメリットもあります。 

非効率、ムダな努力、労力が多い

まず、アナログ営業での新規開拓には、かなりの時間とコストが掛かります。業界にもよりますが、テレアポなら1日100件かけてアポが2~3件、飛び込み営業だと名刺や見込み客になりそうな件数が1~数件程度。双方とも0件の日もあるでしょう。

そこから受注に至ってさらに大口の売上げになる企業となると、1件の成功の背後には何千件もの行動があることになり、まるで「クジ」にでもあたるような確率です。

既存顧客向けの営業でも、アナログ営業は非効率な動きになりがちです。移動時間が発生するため、なかなか1日の商談を増やすことができません。商談件数と売上げ件数が比例することを考えれば、アナログ営業の非効率さは大きな課題です。

前述のHubSpot Japan社の調査でも、営業マンは会議時間や担当と会えないための再訪問や移動時間をムダに感じている結果が出ています。

営業マンの数に比例した売上げしか期待できない

アナログ営業では、売上げ金額は営業マンの数に依存すると言えるでしょう。営業マンが20人の企業と200人の企業なら営業力で負けてしまうことが多くなります。

ランチェスター戦略の「武器の性能が同じなら、兵力数の多い方が勝つ」という考え方のとおり、中小企業が大きな競合他社に勝って成長していくためには、違う営業スタイルをとらなければ難しいと言えます。

嫌がられる、迷惑がられる

アポなし飛び込み訪問は、昔から訪問される側にとっては仕事が中断されるため迷惑に感じることも多い手法です。そのうえ営業マンが礼儀正しくない態度をとることも多く、怒りを買うのもいたしかたない面があります。

信頼関係ができているお客様へのアポなし訪問も、昔なら「せっかくだから情報交換でも」という流れになりましたが、今はどの企業でも働き方改革が進んでおり「業務の効率化」「生産性」を問われています。資料、情報はビジネスチャットやメールで送ったほうが担当者に喜ばれる可能性が高いと言えるでしょう。

コミュニティ内の人脈を使った営業も、顰蹙を買うことは少なくありません。同窓会や勉強会、セミナーなどでフレンドリーに挨拶してきた人とその場でいろいろ楽しく話すことができたと思ったら、後日いきなり営業の電話がかかってきて「なんだ〇〇を売りたかったんだ…」とがっかりした経験がある方もいると思います。相手への配慮なしで行われるアナログ営業は、あちらこちらで迷惑がられます。

もちろん、商材によっては今後もアナログ営業中心で問題ありませんが、お客様から受け入れられていないと感じることが多いのなら、お客様視点でアプローチできるデジタル営業を取り入れることを検討してもよいかもしれません。

デジタル営業とは

デジタル営業とはデジタル(電話、メール、ウェブなど)を活用したお客様を訪問しない営業手法です。昨今のデジタル営業手法はかなり多彩です。

さまざまなITツールが登場したことにより、以下のように初期アプローチから商談、契約やアフターフォローの段階まで営業のすべての段階が、デジタルを活用した対応ができるようになりました。アポイントをとる手法だけでも電話、メール、SNS経由、オンライン商談ツールなどがあります。

初期アプローチ段階

  • ITツールによる営業リストの自動収集
  • メール営業、電話営業
  • SNS営業(営業マンが自分をPRして引き合いを呼び寄せる)
  • MA(マーケティング・オートメーション)によるWeb上の行動解析
  • Web上でチャットボットor営業マンがお客様対応
  • オウンドメディアでeBookなどの資料提供しメアド収集

信頼関係を構築する段階

  • メールマガジンによる情報提供
  • インサイドセールスによる見込み客フォロー、商談創出
  • オンラインセミナー(ウェビナー)の開催

商談~契約~フォロー

  • オンライン商談
  • SFAから見積もり提出
  • クラウド上の電子契約締結
  • インサイドセールスによるフォロー

商材によっては営業リスト作成からクロージング、アフターフォローまでデジタル営業で完結できます。新規開拓強化やマーケティング、既存顧客フォローのみなど、部分的にデジタル営業で対応することも可能です。昨今のITシステムはクラウド型のサブスクリプションモデルが多く、低コストかつ解約も簡単なためリスクもあまりありません。

デジタル営業がなぜ大切か

デジタル営業が大切な理由は、インターネットの普及によりお客様の消費プロセス、企業の購買プロセスが変化し、デジタル上で購入の是非を判断することが多くなったためです。

昔はお客様が何社かの営業マンを呼んで相見積もりをとったり、比較表を作成したりしなければならなかったことが、今は相見積もりサイトを1クリックすればできてしまいますす。商品のデザインやキャッチコピーなどもクラウドソーシングで募集すれば短期間で大量の提案があります。

情報収集を営業マンに頼らないどころか、営業が介在する必要すらなくなっている状況も出てきつつあります。

一方で、ビジネスのデジタル化は営業する側にもメリットがあります。デジタル化により、これまでより低コストで効果的な営業戦術をとれるようになっています。

デジタル営業のメリット

ここでは、デジタル営業のメリットを紹介します。 

デジタル営業のメリット

地方 → 全国に営業エリアを拡大

デジタル営業は、アナログでは接することができないさまざまなお客様とコミュニケーションができます。中堅・中小企業は、これまで資金や社員数の少なさゆえに拠点を増やすことが難しかったと思いますが、物理的な拠点を構えなくてもデジタルを活用すれば簡単に全国のお客様へアプローチすることが可能です。

Webサイトで集客したお客様にはメールで最新情報を定期的に送ることができますし、関心が深まったお客様にはオンラインセミナーを見てもらったり、Web会議システムで打ち合わせをすることが可能です。北海道から沖縄の離島のお客様までコミュニケーション上の支障はほぼありません。全国にお客様を増やすことができるのです。

新たなお客様層を発掘できる

自社サイトに訪れる方の「検索したキーワード分析」を行うことで、これまで気づかなかった新しいお客様層を発見できる可能性があります。

また、意図的に発信する情報を変えることで「大企業だけ → 中小企業も対象」、「中年男性だけ → 若者や女性、高齢者も対象」というように、さまざまな層のお客様にアプローチすることが可能です。 商品は同じまま、お客様の層を拡大できる可能性があります。

商談件数のアップ、売上げ増加

オンライン商談ツール、ビジネスチャットなどを活用すれば、営業マンは1日に多くのお客様とコミュニケーションをとることができます。

前述のとおりアナログ営業には「移動」というムダな時間がかなりありますが、全営業マンが訪問すべき商談とオンライン商談を使い分けて動くことができれば、商談件数をかなり増やせるでしょう。

あるいはインサイドセールス部門と営業部門を分業して、大きい案件も小さい案件もフォローをしっかり行うことでトータルで商談件数を増やす手法もあります。いずれにせよ、商談件数が増えれば売上げ拡大が期待できます。 

デジタル営業のデメリット

もちろん、デジタル営業も万能ではありません。ここではデジタル営業のデメリットを紹介します。 

文章、テキストによるコミュニケーションの難しさ

デジタル営業はメール、チャットなどでコミュニケーションをとることが多くなります。文章や言葉だけで会社や商品の価値を感じさせるためには、それなりの言語化スキルが必要です。ちょっとした表現で誤解を招いてしまうこともあります。SNS営業を行う場合も、注意しないとうっかり漏らした一言で炎上する可能性があります。

記録が残るのがデジタルの怖いところです。アナログ営業のように閉ざされた空間ではなく不特定多数が見ることのできる場所で、意見を発信するリスクがあります。

デジタル営業も迷惑がられる

ネットで面白そうな記事だとサイトを開くと、すぐ大きなPOP広告やチャットボットが出てきて気持ちが引いてしまった経験はないでしょうか?まるで店舗に入ったらすぐ販売員さんにはりつかれる感じです。アナログ営業以上に「押せ押せモード」に感じるサイトは少なくありません。

デジタル営業とはいえ購入するのは同じ人間なのでやはり間合い、気配りは大切です。相手の顔が見えないデジタル営業は、お客様の不評に気付きにくいところがあるかもしれせん。下手をするとイメージダウンにつながりかねないので、Web制作の際は制作会社に丸投げするのではなく、できるだけ営業マンの意見も反映してもらいましょう。

リアルタイムでお客様のニーズに対応できない

デジタル営業はMA(マーケティング・オートメーション)を導入してお客様にメールアドレスを登録してもらい、インサイドセールスが見込み客を絞り込んでいく仕組みで営業するスタイルが現状では多いと思います。

KPIも設定され、トークスクリプトなどもしっかり用意され組織的に動いているかと思います。だからこそ今日、明日という急なニーズに臨機応変に対応できず、アナログ営業マンのニーズがあればすぐ駆けつけたり、トラブルをすぐフォローする対応に比べて後れをとってしまうことはあるかもしれません。

ビジネスでは「素早い対応」が好まれることは多いので、ここはややデメリットと言えます。

売上げ最大化のためにはどちらが有効なのか

売上げ最大化のためには、アナログ営業とデジタル営業のメリットとデメリットを理解し、組み合わせて活用する必要があります。

どちらにより力を入れるかは、お客様の業界によります。総務省の「平成30年通信利用動向調査」を見ると、電子取引(自社サイトなどインターネットを利用した調達・販売)を消費者向けに実施しているのは卸売り・小売業、金融・保険業。企業向けに活用している業界は卸売・小売業、情報通信業となっています。

実績でみるとまだ一部の業界が先行している状況であり、事例豊富という段階ではないようですが、BtoC向けの商材は今後ますますデジタル化が進行していくことがうかがえます。

電子商取引実施状況

 画像引用元:総務省

BtoB商材を売る営業部門としては、近い将来のための効果的な営業手法を導入したからといって今年度の数字を落とすことはできないため、当面は再現性のあるアナログ営業を行いつつ、デジタル営業を部分的に取り入れていくことが望ましいと言えるでしょう。

デジタル営業とアナログ営業の組み合わせには、以下のパターンがあります。 

  • フィールドセールスにオンライン商談ツールを活用してもらう
  • 営業マンにSNSの個人発信、企業アカウント発信を許可する
  • MA導入+インサイドセールスで商談創出までを担当させる
  • メールマガジン+Webサイト充実(eBookなど資料用意)+チャットボット
  • YouTubeでオンラインセミナーの常時配信
  • SFAを活用した行動管理による商談数アップ
  • インサイドセールス部門に小~中規模既存顧客のフォローを任せる

昨今はSaaS(サブスクリプションモデルのクラウドシステム)が多いため、今までのように何百万かけてシステムを構築しなくても月額ベースで利用し、合わないと判断すれば解約も可能です。

ITツールについては今はカオスマップと言われるほどさまざまな種類があり選ぶのも大変ですが、「当社が新たにマーケットを創造するためには何をすべきか?」「現状の営業マンの商談件数を増やすためにはどの業務を効率化すべきか?」というシンプルな視点で活用を考えていくと、売上げ拡大につながりやすいのではないかと思います。

まとめ

営業部門の価値は、お客様の課題を解決して売上げを最大化することにあります。アナログ営業もデジタル営業もあくまで手段であり、根底にあるものは同じです。ただし、有効な手段は時代とともに変化していきます。

デジタル営業ツールについては、今後さらに画期的なAI搭載したツールが登場してくると思いますが、時代の変化、お客様の価値観の変化に合わせて最適な手段を選んでいきましょう。

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    デジタル時代の営業スタイル

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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