顧客エンゲージメントとは?営業マンが知っておくべきポイント

顧客エンゲージメント

近年は「顧客エンゲージメント」「従業員エンゲージメント」「エンゲージメント率」など、ビジネスのさまざまな領域でエンゲージメントという言葉が頻繁に使用されるようになりました。

エンゲージメントとは具体的にはどのような意味なのでしょうか?企業がエンゲージメントを高める施策に力を入れ始めているのはなぜでしょうか? 

本記事では、エンゲージメントそのものの意味や、営業マンが知っておくべき「顧客エンゲージメント」の定義、顧客エンゲージメントを測定する指標の計算式、顧客エンゲージメントを高めるメリットなどを解説します。

エンゲージメントとは?

エンゲージメント(engagement)とは約束、婚約、従事などを意味する英単語です。契約(contract)のようにビジネスライクな形式的な関係性というよりも、お互いの好意や感情的な結びつきで互いに貢献しあう関係性という意味合いを持ちます。

エンゲージメントはもともと心理学の領域で生まれた概念ですが、昨今はさまざまな分野で気持ちを測る指標としても使われるようになりました。 

ここではビジネス領域でよく使われる「従業員エンゲージメント」と「顧客エンゲージメント」について解説します。 

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントとは、従業員が勤めている企業や同僚などに対してどのくらい愛着や信頼感をいだき貢献したいと考えているかを示す指標です。 従業員エンゲージメントについては、近年の研究により離職率や企業の収益などと関わりがあるという結果が多くの機関から発表されています。

たとえば、米国CEB社は「従業員エンゲージメントの高い従業員と低い従業員の1年間の離職率に7倍以上の差がある」ことを発表しています。また、日本の名城大学教授の『高業績を志向する管理の新潮流』という論文でも「エンゲージメントが高いグループは品質管理業務の不良件数が少ない」という調査結果が紹介されています。

日本においては、米国の大手調査会社Gallup社が2017年に発表した「従業員エンゲージメント国際比較」において、日本の順位が139ヶ国中132位という結果が出たこともあり、従業員と企業の信頼関係を真剣に考え直そうという機運が高まり、昨今は先進的な企業を中心に「従業員ファースト」の意識が高まりつあります。

顧客エンゲージメント

顧客エンゲージメントとは、お客様が企業や商品・サービスに対してどのくらい愛着や信頼を抱いているかを示す概念であり、指標としても使われます。

顧客エンゲージメントの高いお客様とは、「ファン」「支持者」「ロイヤルカスタマー」をイメージすると近いかもしれません。 価格の高低にこだわらず商品を長年購入し続けたり、友人知人に自分の気に入っている商品・サービスを紹介したり、SNSなどで好意的なコメントを拡散するなど自発的に商品・サービスを応援してくれるお客様です。 

近年になって顧客エンゲージメントの研究が増加した理由は、米国マーケティング科学研究所が2000年代以降、インターネットの普及により複雑化した顧客行動を理解するフレームワークとして顧客エンゲージメントを研究する意義を示したことが影響していると言われます。

さまざまなWebサイトやSNSなどのメディアが登場し、特にBtoCのお客様の購買行動が見えづらくなっていたこともあり、その後研究や調査が進み、以下のような顧客エンゲージメントと企業業績との関係性の高さを示すデータが公表されます。

  • エンゲージメントの高い顧客はほかの顧客に比べ、商品・サービスを購入する割合、利益率、収益などが23%高い。
  • 完全にエンゲージしている金融機関の顧客はエンゲージしていない顧客よりも、メインバンクに37%以上高い収益をもたらす
  • エンゲージメントの高いホテルのゲストはほかのゲストに比べ、ホテルで使う金額が46%ほど多くなる。

参考:Gallup

その結果、多くの企業が顧客エンゲージメントを重要な経営指標として認識するようになったのです。

顧客エンゲージメントがなぜ大切なのか

顧客エンゲージメントの向上は、企業の売上げや収益向上につながることが期待できます。そのため、昨今は海外はもちろん国内でも多くの企業が顧客エンゲージメントを高める施策に投資しています。顧客エンゲージメントが大切な理由を以下に具体的に記載します。

お客様の影響力の増大

SNS社会である現代は、お客様一人ひとりがメディアに相当する力を持っています。「お客様=購入する人」という定義では収まりきらず「お客様=商品・サービスの価値を判断し評判を広める人」「お客様=第三者に商品をすすめ売上げに貢献できる人」「お客様=商品に対する率直な意見や要望を伝えてくれる人」という感じで、お客様の持つ影響力が多方面にわたります。

企業にとっては、パートナーような位置づけに近づいてきたとも言えるでしょう。

お客様に満足してもらい好意的な評価を拡散してもらうことは、広告と同じか場合によってはそれ以上の効果を発揮します。最近のお客様は企業のWebサイトや広告よりも、SNSの評価などを信頼する人が増えているからです。

顧客ロイヤルティ協会が古くから提唱する「ジョン・グッドマンの法則」によると好意的な評判は1人から5人に伝わるとされています。今はSNSというツールがあるため、その影響力ははるかに大きくなっているでしょう。

お客様と共創する時代

商品・サービスが出てもすぐコモディティ化する競争の厳しい時代は、お客様から積極的に商品・サービスへの改善提案やご要望をもらうことが、品質向上や優れた商品開発につながります。

昔、ユニクロ社が「ユニクロの悪口言って100万円」という広告を出し、わざわざ自社商品への不満を集めたことがありますが、よほどのクレームでなければほとんどのお客様は黙って去ってしまいますので、お客様の本音は企業にはわかりづらいものなのです。

本音がわからないと、お客様にとってまとはずれなサービスを熱心に提供したり、必要のない機能をムダにつけたりするなど企業の自己満足的な商品・サービスになってしまうリスクがあります。

顧客エンゲージメントが高いお客様は、商品・サービスに不満がある場合、黙ってさらずに意見を言ってくれるとてもありがたい存在です。顧客エンゲージメントの高いお客様を増やすことで、企業は前向きなアイデアや意見を収集でき、新たな企画に活かすことができます。

顧客エンゲージメントの測定で最適な施策がわかる

インターネットの普及により今のお客様は情報収集に長けており、購買行動も実店舗だけではなくWebを経由した購買など、多様な経路をたどります。顧客接点ごとに顧客エンゲージメントを測定することで、より正しい施策を打てるようになります。

例えば、Webサイト上での顧客エンゲージメントを測定するためのKPIを設定し、測定したエンゲージメントの数値をもとにWebサイトのUIを改善したり、適切なタイミングで適切な情報をダウンロードできるような仕組みを作れば、徐々にお客様のエンゲージメントはあがりコンバージョンにつながる可能性が高くなります。

顧客エンゲージメントの指標

顧客エンゲージメントはお客様の満足度だけでなく、その後の収益面を予測できるところに特徴があります。以下に顧客エンゲージメントの代表的な指標である「NPS(ネットプロモータースコア:親しい人への推奨度)」「リピート率」「解約率」について紹介します。

 NPS(推奨度)

最近は、Web上のサービスを使った時によく「あなたがこの〇〇を友人や知人の方に薦める可能性はどのくらいですか?」というアンケートを依頼されることが珍しくないかと思います。

実はこの質問こそ、顧客エンゲージメントの指標である「NPS」を測定できる質問なのです。シンプルな質問ですが「NPS(親しい人への推奨度合い)」は、顧客エンゲージメントの主要な要素である顧客ロイヤルティの高さを如実に示します。

測定・計算方法は以下のとおり簡単です。

  • 「あなたがこの商品を親しい友人にすすめる可能性はどのくらいですか?」という質問に10段階評価で回答してもらいます。
10段階評価
  • 回答者を3分類します。
回答者を3分類
  • 推奨者の割合から批判者の割合をマイナスするとNPSが出ます。
    NPS=推奨者の割合―批判者の割合

参考ネット・プロモーター経営 〈顧客ロイヤルティ指標 NPS〉 で「利益ある成長」を実現する

例えば、推奨者が全体の30%、批判者が40%なら、NPSは「-10」となります。
NPSの数値からお客様が本音ではどのくらい商品を評価しているかが把握でき、数値の変化を追いながら商品・サービスを改良していくことができます。また、推奨者の割合から自社商品・サービスの口コミによる新規受注見込みをある程度予測できます。

ただし、日本は海外と比べるとNPSがかなり低い数値になる傾向があり、数値の低さはあまり気にせず、国内同業他社との比較程度に留めるほうがよいかも知れません。NTTコムオンライン社の2019年「NPSランキング&アワード」でも業界1位の企業すらほとんどマイナス値です。 日本人が世界一厳しい消費者と言われることも影響しているでしょう。

なお、NPSの質問を「あなたの友人にこの会社で働くことを進める可能性はどのくらいありますか?」とアレンジして「従業員エンゲージメント」を測定することも可能です。

リピート率

お客様のリピート率は営業マンの多くが意識していることかと思います。1:5の法則や5:25の法則などでも言われるように、既存のお客様からの売上げは、新規開拓よりもコストがはるかにかからないで済みます。お客様のリピート率が高いほど、年間売上げを組み立てやすくなります。

リピート率を出す計算式は以下のとおりです。

 例)

  • 月間リピート率= 月間リピート顧客数 ÷ 累計新規顧客数×100
  • 年間リピート率= 年間リピート顧客数 ÷ 累計新規顧客数×100      

リピート率を出すことでお客様がどの程度満足しているかどうかを把握でき、今後も商品・サービスを使ってもらえそうかどうかを予測できます。

解約率(チャーンレート)

会員制サービスやSaaS型のビジネスモデルでは、新規のお客様を獲得することは比較的簡単でも、すぐ解約されるリスクがあります。当然、サービスに不満を感じるお客様が解約するので「解約率」は顧客エンゲージメントの有効な指標です。 

解約率は低ければ低いほどよく、サービスの利益がどんどん積みあがります。逆に解約率が高いサービスは、いくら新規獲得をがんばっても収益拡大は期待できません。場合によっては投資費用すら回収できないこともあるでしょう。 

解約率のわずかな差は長期的に見ると大きな収益の差につながるため、投資家も解約率を重視します。昨今、Slackに代表されるようなSaaSスタートアップ企業が赤字にも関わらず巨額の投資金額を集めて上場するのは、解約率の低さから将来の収益が期待されていることも一つの理由です。 

解約率には以下のような種類があります。

  •  顧客数ベースの解約率(カスタマーチャーンレート)
    計算式:一定期間で解約したユーザー数÷期間前の全ユーザー数×100
  • 収益ベースの解約率(レベニューチャーンレート/MRRチャーンレート)
    計算式:今月解約があったアカウントによる減益の合計 ÷今月初時点での月次収益 ✕ 100

顧客エンゲージメントを高めるために営業マンができること

元々エンゲージメントとは、双方向の関係性を表す概念です。まず、企業や営業マンがお客様に対して貢献する姿勢を打ち出し、お客様に喜んでもらうことが先であり、その結果お客様の満足度が感動の域に達すると商品・サービスのファンになってもらえます。

ビジネスがデジタル化してきたとは言え、多くの企業の顧客窓口はまだ営業マンです。営業マンの振る舞い、知識やスキル、提案力は顧客エンゲージメントに大きく影響します。ここでは、営業マンが顧客エンゲージメントを高めるためにできることを解説します。

お客様の理解をする

顧客エンゲージメントを高めていくには、まずは営業マンがお客様について深く理解することが必要です。初回訪問の前には事前情報を収集し、訪問後も日々メディアなどからお客様の業界の情報をチェックし、変化を掴んでおくことが望ましいと言えます。

特に BtoB企業の場合、自社の事業内容や業界の専門用語などを外部企業の営業マンが理解するまでに時間がかかります。購買担当者も細かく説明しなければならない営業マンよりも、自業界・自社の状況を理解している営業マンのほうに好感を持ち意見を聞いたりしやすいものです。 

(理解すべき知識)

・お客様の業界についての知識
・お客様の主力商品や販売方法、競合他社
・抱えている課題、潜在的な課題
・企業風土 など

お客様に合わせた情報を提供する

昨今のお客様は、非常に勉強熱心で情報収集力が高い方が増えています。そのようなお客様は、公に出ている情報を知っている場合も多いため、できるだけ入手が難しいデータや自社独自の事例や調査結果などを提供すると歓迎されるかも知れません。

一方で、情報リテラシーが高くないお客様も存在します。あまり知識がない段階のお客様に大量の情報をお送りしても、お客様が処理しきれず、かえって困ってしまう可能性もありえます。

営業マンの方は、人との距離感を掴むことに長けているかと思います。お客様の個性や状況にあわせて、適切なタイミングで適切な情報提供を行うことが望ましいと言えます。 

定期的なフォローを行う

新規開拓から取引後の既存顧客営業までを、一人で担当している営業マンの方も多いと思います。一人ですべての顧客接点の窓口になる場合は、パレートの法則に基づいて重点顧客に時間配分を多くしながらも、売上げが小さいお客様も定期的にフォローできるような仕組みが必要です。

例えば、 メルマガ、ブログ、SNSなどで購入後のお客様が自社商品・サービスをより有効活用できるよう情報を提供し、折をみて電話するなどの方法があります。単純接触効果(ザイアンス効果)と言われますが、人は定期的に接する対象に好感を持ちやすいので、訪問回数は少なくともお客様との関係を継続しやすくなります。

例え、たまにしか情報を見ていなくても、定期的に情報を受け取っているとお客様は商品・サービスに関して詳しくなり、企業姿勢に信頼感、安心感を持ってもらえるようになりますので、顧客エンゲージメントを高める効果が期待できます。

逆に、商品購入後放置されていると大事にされていないと感じ「売る時だけ熱心な営業マン」というマイナスな印象を持たれてしまうでしょう。頻度は少なくとも訪問することも大切です。対面を好むお客様は「来てくれたから」という理由で好感を持ってもらえます。

定期的なフォローは「お客様のことを気にかけています」「いつでも役に立てる体制でいます」という意志表明です。近年はムダな慣習だと言われることもありますが、年に一度の年賀状などもお客様の層によってはかなり有効かもしれません。

まとめ 

企業は「お客様のために」「顧客第一義主義」と打ち出します。しかし、現実にはお客様の本当の満足度をつかむことは難しく、実際にお客様のためになる商品・サービスを開発しているか、提案をしているかは想像になりがちです。

その点、顧客エンゲージメントはNPS、リピート率、解約率などを計算してデータを出すことで、想像ではない現実に近いお客様の満足度や売上げへの影響度を測ることができる指標です。まずは、自社のお客様の顧客エンゲージメントを測定してみましょう。そこからKPIを設定するなど施策を立てていくことができます。

本当に使える、意味のある営業活動KPI集」では、KPIを設定する際に参考になる指標を紹介しています。ぜひご覧ください。

    営業KPI

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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