営業管理で売上を向上させるためにすべきこと

営業管理職 間違い

営業管理職の皆さんは、日々売上げ目標達成のために奮闘しておられるかと思います。

実践的な管理能力をつけるために知識を学ぶことや、成功のヒントを探すのは有効なアプローチです。一方、転ばぬ先の杖として、事前に誰もがおかしやすい間違いやミスを押さえておくことも大切です。

今回は、営業管理で売上げを向上させるポイントと新米営業マネージャーだけでなく経験豊富な営業管理職でも犯しやすいミス、誤解しやすいポイントを紹介します。

営業管理とは?

営業管理とは、売上げ目標を達成するために営業マンの活動やお客様の状況を適切にマネジメントすることです。管理手法には以下のようないくつかの種類があります。

  • 目標管理(売上げ管理/予実管理)
  • 顧客管理(案件管理)
  • 行動管理(KPI管理、営業プロセス管理、営業パイプライン管理等)
  • モチベーション管理

営業活動やお客様の購買活動をどの角度からマネジメントするかによって手法が異なるため、内容が重複しているところもあります。また、企業によって呼び名が異なる場合もありますが、数字の進捗を管理する「目標管理」、お客様との取引状況を管理する「顧客管理」、営業マンの活動を可視化する「行動管理」は特に重要と言われています。

2014年のリクルートマネージメントソリューションズ社の調査では、継続的に業績が向上している営業組織の特徴として、以下の4点をあげています。

  1. 顧客に提供する価値が明確である
  2. 営業活動の標準形が決められ実践されている
  3. 営業担当同士で営業のやり方・知識・スキルに関して相互に学びあう風土がある
  4. 営業活動で得た顧客の声を営業活動の改善に活かしている

前提に商品力があることはたしかですが、2~4のように営業管理が適切に行われており組織的に営業できる企業が近年の厳しい環境下においても実際に業績をあげていることがわかります。一方、2019年にHubspot社が行った「日本の営業に関する意識・実態調査結果」においては39.2%の組織が「顧客情報の管理方法は明確ではない/わからない」と回答しています。顧客管理一つとっても変化の激しい営業現場において情報をどのように管理しデータをどう活かすかが、決して簡単ではないこともうかがえます。

営業管理が大切な理由

営業管理はなぜ重要なのでしょうか? 一昔前のように営業マンを大量採用し、数、根性、気合いを前提とした数字至上主義のもと、売れる営業マンは高収入を稼ぎ続け、売れない営業マンは徐々に辞めていくようなマネジメントをしても、事業は継続できそうな気もします。

しかし、2000年前後に米国から入ってきた科学的な営業マネジメントと比較すると、いわゆる昭和時代のマネジメントはあまり効率が良くないのです。営業管理ができていない企業では往々にして以下のような事態が起きて、全体の生産性を下げがちです。

顧客管理ができていないと?

顧客管理ができていない企業では、営業マンとお客様との仕事のやりとりがブラックボックスになりがちです。苦手なお客様をフォローせず放置していても営業マン以外に詳細はわかりません。また、担当の営業マンが退職したり、異動したりするときに引継ぎがスムーズにいかないことが起きます。 

「新しい営業マンは前の営業マンほど対応が行き届かない……」
「最初から自社のことを説明するのが面倒……」

そう感じたお客様は、他社の慣れ親しんでいる営業マンに発注してしまうことがあります。異動ならまだよいのですが営業マンが同業界の企業に転職した場合、そのままお客様を何件か持っていってしまう場合もあります。 後任の担当者はどうしても顧客知識で前任者に負けてしまうため、残念ながら企業同士の取引が止まってしまうことがあります。

この場合、お客様は営業マンの能力に魅力を感じてはいたかもしれませんが、もし、日頃からデータベースで顧客管理をしていれば後任の担当者もスムーズに仕事ができ、「さすが〇〇社さんは引き継ぎもしっかりしている」と取引が継続し売上低下を防げた可能性は十分あります。

行動管理ができていないと?

管理職が、営業マンの成果だけをみて営業活動のプロセスを管理しないとどうなるでしょうか? まず、売上げが上がらない営業マンの原因がなかなかつかめなくなります。

営業部門には「この営業マンは知識豊富で商談件数も多いのに、なぜあまり売れないだろう?」「どうして頑張っているのに成果が出ないのだろう?」というタイプが何人かはいるかと思います。そのような場合、往々にして営業プロセス上にボトルネックがあるものです。もしかしたらキーマンに会うという意識がないのかもしれません。傾聴スキルが低いため課題把握力が弱いのかもしれません。営業プロセス管理ができていれば営業マンが躓いている段階がわかるのですが、できていないため推測で指導・アドバイスし、結局はあまり効き目がなく営業マンは伸び悩みます。

また、数値による営業管理ができていないと、アプローチ数から成約までの率、いわば「打率」がわからないため、営業マンもどのくらい頑張れば成約できるのかが見えず、売上げ目標を達成するイメージがなかなかわきません。売上げが上がらない時期が続くと落ち込んでしまったり、逆にそれほど動いていないのに頑張っている感覚になってしまったりします。

仕事の属人化が進む

営業管理が適切に行われない組織では営業マンが一匹狼的、独立自営業化していきます。仕事の属人化が激しくなり、「強い人は強い、弱い人は弱い」という組織になります。

強い営業マンは強い理由を公開せず、弱い営業マンは周りに助言を求めづらい組織では一部の営業マンしか売る力がないため組織力が強くなりません。もっとも、営業マンはみな自分の売上げ数字を上げるのに必死です。「情報やノウハウを共有化しろ」と指示したところで、お互いに遠慮もあればライバル意識もあり、そうスムーズにはいきません。

仕組みとして顧客情報、営業活動の状況を可視化できる体制を整えて情報を蓄積していくのは、あくまでマネジメント側の責務だと言えます。

営業管理と営業活動の違い

営業管理と営業活動は一見、非常に近い位置にあるようですが仕事の内容は大きく異なります。スポーツに例えれば「監督」と「プレイヤー」のようなものです。営業活動とはあくまで個人プレーですが、営業管理職は個々の営業マンのスキルや意欲、行動をマネジメントし、実際の案件について適切なアドバイスを行いチームの売上げ目標を達成する仕事です。

営業管理職になると仕事の目的が大きくなり、求められる素養、スキル、知識は高くなります。 

  •  営業管理職のマインドセット:
    チームの目標達成および部下の営業マン全員が売上げを上げられるように、チーム内で知識や事例を共有する環境を整備したり、一人ひとりに合わせた指導、アドバイスをして部下を成長させる。
     
  •  営業管理に必要なスキル:
    リーダーシップ、問題解決能力、営業戦略構築力、数値管理能力、コーチング力、チームビルディング etc

いきなり幅広い知識が求められるため、営業管理職に昇進してからすぐに完璧にできるようになるのは難しいのですが、少なくとも案件管理、行動管理など営業マネジメントの基本は学んで実践していく必要があります。昨今の課長クラスはプレイングマネージャーが多く目標数字も抱えているかと思いますが、管理職の優先職務はマネジメント業務であることを常に意識する必要があるでしょう。

営業管理の指標

ここでは、営業管理において特に重要な指標を紹介します。

営業パイプラインの管理

営業パイプライン管理とは一つひとつの案件を段階ごとに管理することです(営業プロセス管理とほとんど同義です)。営業活動は、最初のアプローチ手法こそさまざまですが、初回訪問のあとは大体同じ流れで進みます。

営業パイプライン管理

アポがとれてからをより細かく分解すると事前情報サーチ→初回訪問→ヒアリング・課題の把握(複数回コンタクト)→解決策の提案→クロージング→顧客フォロー(アップセル・クロスセル)となります。各工程を数値で管理すると営業マンの強み・弱みが見えてきます。

  • チェックする指標:アポイント率、提案率、成約率、リピート受注率 ※数でも可

一般にITツールやスプレッドシート上で管理しチームで共有します。営業パイプラインがあると営業活動の全体像が把握でき、どの営業マンがどの企業に対してどのようにアプローチをして、どのような状況かが可視化されるため、営業管理職は指導やアドバイスを的確に行えるようになります。

成約しなかったときの失注ポイントがわかり課題がつかみやすくなります。営業マンも他の営業マンの営業活動の流れや数値を見て学ぶことができ成長します。

営業活動の管理

チームの売上げを上げるためには営業マンの商談数を増やさなければいけません。商談数は結局のところコンタクト数に比例することが多いので、営業活動においてはアプローチ数を管理することが重要です。

特に新人営業マンのうちは、何件アプローチしたらアポイントが取れて、その中の何件が商談につながり、何件が成約するのかを率として出して、営業マン自身が必要なアプローチ数を知ることが大切です。 管理職はもちろん営業マンが以下のKPIを認識し、行動することで着実に売上げ目標を達成できるようになるでしょう。

  • 新人のKPI例:テレアポ数、営業メール数、1日の商談数等

売上げ目標が大きくなるにつれ、単なるアプローチ数だけでなくターゲットとする業界、企業の選定眼、問題解決能力の高さなどが必要になってきます。中堅営業マンには以下のように大きな売上げに直結する指標をKPIにするとよいでしょう。

  •  中堅営業マンのKPI例:商談数、キーマン面談率、 BANT条件の確認、 提案数等

営業売上の管理

売上管理とは、営業目標に対しての売上げ数字の進捗状況を管理することです。毎月はもちろん四半期、半期、年間の目標に対して現在どの程度の達成率か、前年同時期と比較して売上げの伸びはどうかなどを分析しながら目標達成に向けての対策を決めていきます。

一般に、月初に各営業マンに売上げ予測を見込み度別(確定、A見込み、B見込み、C見込み)に立ててもらい、週ごとに数字の状況をチェックしていくパターンが多いかと思います。

売上げ数字は、景気の影響で全体的に売上げが上がったり下がったり、一部の業界や一部の大型クライアントの数字が落ち込むなど、外部環境の影響でも大きく変動します。

既存顧客の売上げが大きく落ち込む予測が出たら、新規開拓により力を入れて数字をカバーしなければいけません。数字を日々分析することで早めに手を打つことができます。

  • 指標例:目標達成率、前年比、売上げ構成比(顧客別、商品別、新規:既存等)

営業管理を効率的に行うためのしてはいけないポイントは?

 ここでは、営業管理を行う上でしてはいけないこと、注意すべきことを解説します。

営業マネージャーとしての勉強をしない

営業管理職のほとんどが、営業マンとして優秀な成績を残した結果、営業マネージャーになっているかと思います。マネージャーになったからといって、営業管理職として教育を受ける機会があるとは限らず、自分自身の努力によって、管理職としてのスキルを身につけなくてはなりません。

前述のように営業力にプラスして学ぶことは非常にたくさんあり、営業マン時代の比ではありません。管理職として必要な知識・ノウハウを学ばないまま年月を重ねても、部下が優秀なら売上げは上がっていきますが、下手をしたら営業マン時代からほとんどスキルが変わらないという残念な状態に陥ってしまいます。

自分の営業を優先しすぎる

営業マネージャーは、チーム全体の売上目標を管理し達成する責任があるため、自らの営業を第一にするべきではありません。むしろ、自分が現場に出なくてもチームが目標達成できることが理想です。

そのためには自分を戦力と見なすのではなく、スポーツで言えば監督、コーチとみなすことが大切です。売上げ目標を設定し、達成するための営業ワークフローを作成するなど、営業マンが動きやすい環境を整え、各営業マンの能力を見極めながら進捗を把握し必要な助言やサポートしスキルを伸ばしていくのが営業管理職の役目です。

営業のワークフロー作成、管理をしていない

営業ワークフローとは、営業パイプライン(営業プロセス)を細分化し、各段階ごとに使う資料、ツール、メールテンプレートなどを決めた営業活動のマニュアルのようなものです。営業ワークフローの作成は手間はかかりますが、一度作成すると、部下を育てる仕事が楽になります。

ワークフローがあれば新人営業マンも迷わず仕事を進めることができます。新人の中には先輩や上司に質問することが苦手で、ついわからないことをそのままにしてしまうタイプもいるものです。ワークフローがあることで若手営業マンに物事を放置するクセ、先延ばしのクセがなくなることが期待できます。

また、ベテランの営業でもちょっとしたフォローを省いたり、提案後に自分の経験則や思い込みで勝手に「ここは無理」と判断してお客様に確認しないようなことがあります。ワークフローがあると営業マン全員の行動が標準化されるため、フォロー不足や失注が少なくなります。

営業ワークフロー作成手順は以下の通りです。

  1. 営業パイプライン(プロセス)の標準化
  2. 営業パイプライン(プロセス)ごとの営業ツール作成
    ・テレアポトークスクリプト
    ・営業メールテンプレート
    ・提案書フォーマット
    ・成果事例、見積書フォーマット
  3. 定期的なワークフローの見直しと改善

管理職としては口頭で指示したほうが簡単かもしれませんが、仕組を構築するほうが結局、効率的です。営業ワークフローなしということは地図なしで自分で調べて目的地にいけということに近いかもしれません。そうすると到達できる営業マンが僅かになってしまいます。

トップセールスマンだからと管理職に昇進させる

管理職としての適性と優秀な営業マンとしての適性は異なります。適性のないトップ営業マンが昇進してしまうと、チーム全体のパフォーマンスが下がり、トップ営業マンの売上げも失うという結果を招くことがあります。

マネージャー自らが営業に専念してしまい部下たちをアシスタントとして活用し、新たな人材が育たないという問題が起こることもあります。部下たちと数字を競い合うライバル関係になることもあります。必ず、売上げ数字+人間性+指導力などを考慮して営業管理職をえらびましょう。

もっともトップセールスマン=ダメということではありません。営業力とマネジメント力を兼ね備えた人物もいます。できれば、営業現場で営業管理職に必要な要件(数字だけではないということ)をある程度は伝わるようにしておく必要があります。昇進基準があいまいだとトップレベルでない営業マンが昇進したときに恣意的な人事と思われる可能性があるからです。

それが、トップセールスマンに、マネジメント職につくためには新たなスキルを学び研鑽する必要があると認識してもらうことにつながります。

営業マンとの個別面談を行っていない

昨今はテレワークが普及するとともに、在宅ワーク下でのうつ、モチベーション低下などが問題になりつつあります。人は社会的生物であるため、所属している組織内の人と気持ちの交流がないとメンタルに影響してしまいます。

部下の営業マンたちとは日々顔を合わせて、営業会議でも話を聞いているかもしれませんが、一人ひとりの営業マンとの定的な個別面談は必ず行いましょう。営業管理職なら営業現場でお客様の話をとことん聞くこと、適切な質問をすることが、いかに自分への信頼度を高めたかを経験してきたと思います。

上司・部下の関係性なのでお客様のように接するということではありませんが、月に1回程度でもコーチングの場(徹底的に話を聞く場)があると、営業マンも自分の思考や意志を整理整頓できます。自分の新たな目標を見つけるなど、前向きになれるでしょう。

売上げにつながる重要な案件を動かしているのは彼らです。現状を把握し、適切なアドバイスをし、前向きな気持ちになってもらうことも上司の重要な役割です。なお、部下との面談を他愛ない理由でキャンセルすれば、部下もその面談は重要ではないと認識するようになるかもしれません。

時間管理ができない

経験豊富な営業管理職でも、時間管理が効率的にできていないことがあります。まずは時間の使い方を見直し、無駄な時間の洗い出しと、やるべきことの優先順位づけを行いましょう。いつも忙しそうに見える管理職は部下から見ると「相談しにくい」「自分のことばかりしている」と映ってしまう可能性があります。

また、ミーティングの回数や長さは適当でしょうか? 前述のHubspot社の調査において「営業に関する業務のなかでムダだと感じるもの」という質問に対する、営業マンの回答1位は「社内会議」2位が「社内報告業務」です。

管理職であれば、部下の長時間労働の原因、商談の時間を減らすことにつながるような業務を削減できる実行力が欲しいところです。売上げに直結する時間を増やし、些末な業務はなくすか減らす。この基本を徹底していきましょう。

まとめ

営業部門は成果主義であることが多いかと思いますが、成果のみで管理していくと営業マンの能力差が大きくなりすぎたり、企業の資産であるお客様の情報が蓄積されず、結果として企業の総合力が上がらないことがあります。

一見、遠回りに見えても営業プロセスの標準化、情報共有の仕組、KPI管理などを導入してプロセスマネジメントに力を入れると、新人営業マン も早く成長し、成績がかんばしくなかった営業マンもそれなりに売れるようになり全体の売上げが向上していきます。

管理職になったら「自分が売ってチームに貢献する」から「多くの部下を成長させて大きな売上げをあげる」という思考に切り替えましょう。こちらから「本当に使える、意味のある営業活動KPI集」がダウンロードできます。効率的に営業マンを育成するためにご活用ください。

    営業KPI

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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