営業マネージャーが持つべきマネジメントの資格とそのメリット

マネジメント 資格

近年の営業マネージャーに求められるスキルは、昔と比較するとはるかに高くなっています。業務知識はもちろん、数値管理能力、コーチング力、リスクマネジメントなど一つ二つ極めるだけでも大変なスキルを幅広く身につけなければなりません。

 一方、営業マンが会社でマネジメントについて学ぶ機会はあまりなく、自分の上司の姿を見て「背中で学ぶ」ケースが多いのではないかと思います。営業マンとして優秀な方でも、マネジメント知識がないまま昇進するとチーム運営で行きづまることが出てきます。

マネジメントスキルには、標準化されたノウハウが存在します。管理職になったら少なくとも基本的なマネジメント知識をできるだけ早急に学んだほうがよいと言えます。

体系的かつ効率的にマネジメントスキルを身につけるには、マネジメントの資格取得をめざすことが早道です。資格試験の問題は真に重要な内容が絞り込まれているため、学習する過程でパレートの法則でいう2割の重要な知識を身につけることができます。

本記事では営業マネージャーが持つべきマネジメントの資格をご紹介します。

マネジメントに関わる資格とは

マネジメントの意味は直訳すると「経営・管理」となります。企業において「人、モノ、カネ、情報」を動かして目的を達成する仕事をさし、役割や権限に応じてトップマネジメント(経営者)、ミドルマネジメント(役員~部長)、ロアーマネジメント(課長、係長)という分類がされます。

営業マネージャーは社長や部長などに比べると権限は小さくとも、自分が率いる組織の目標を達成する役割を担う経営側の職位なのです。

マネジメントに関わる代表的な資格には「中小企業診断士」「ビジネスマネジャー検定」「プロジェクトマネジメント」などがあります。また、マネジメントという名称がつかなくても経営に関する知識を問う資格もありますし、MBAなどは正式には大学院の学位ですが、日本では難関資格と同じような捉え方をされます。

いずれも幅広い分野の知識が問われるため、取得したり卒業したりするのは大変ですが、難しいからこそ社会からの評価も高く、持っていると一定のマネジメント知識がある人材と認められます。

マネジメントの資格がなぜ必要とされるのか

営業マネージャーになる方は、おそらく営業成績などの成果は十分あげきた方々だと思います。またマネジメントを行うにあたり必ずしも資格は必須ではありません。「人間力」「業務知識」「営業力」はやはり重要です。

とは言え、今の営業職はかなり広範囲の知識を必要とする知識労働であり、近年の営業マンは向学心にあふれています。ビジネスメディア「DIME」が2019年に全国の営業職に行ったアンケート結果を見ると、ビジネスの資格にチャレンジした人は全体の57%にものぼります。

営業職に行ったアンケート結果

出典:DIME 

そして「自分が不足していると感じるスキル」の1位に「マーケティング知識」(25.6%)、2位に「数値管理力」(22.7%)をあげています。 

営業チームのトップである営業マネージャーは、部下より売る力や総合的な知識が上回っていることが望ましいと言えます。また、営業マネージャーは戦略構築能力、人材育成力、複雑な問題に対しての決断力など、プレイヤーの頃よりはるかに高い能力を要求されるため、新たな学びが必要なのです。

マネジメントの資格を持つメリット

 ここでは、営業マネージャーがマネジメントの資格を持つメリットを紹介します。

体系的な知識を学ぶことができる

営業マネージャーの方も営業戦略を立てる時に、4P、3Cなどのフレームワークを活用したり、部下とコミュニケーションをとるためにコーチングを学んだりしておられると思います。しかし、マネジメント領域は幅広いので独学では断片的な知識になりがちです。

資格試験は、広範な知識の中でも重要な分野に絞って出題されるため、学ぶ過程で知識を体系的に整理できるところがメリットです。

もちろん営業マネージャーは知識だけでは成り立ちませんが、マネジメントの知識が不足していると、人間力と営業スキルに頼って部下をマネジメントすることになり、自分と違うタイプの部下を伸ばせないことや、課題解決策を探すのにムダに時間がかかることがあるかも知れません。

知識が体系化されていなければ、将来の営業マネージャー候補にマネジメントを教えることも難しくなります。現場感も大切ですが理論やフレームワークを理解したうえでマネジメントすることも大切です。 

視野が広がる

「視野が広い」「視座が高い」「物事を俯瞰してみることができる」という言葉は誉め言葉です。組織の上位層ほど求められる資質です。資格取得に向けて勉強すると新しい知識が身に付き、そこから視野が広がるメリットがあります。日常のマネジメント業務でも、これまで気付かなかった見方ができるようになるでしょう。

営業現場は忙しく日々漫然と過ごしていると、自分の目に見えるお客様のことや職場の半径3mの世界しか見えなくなりがちです。 インターネットが普及して欲しい情報や興味のある情報は容易に入ってくるようになりましたが、興味がない情報に関してはシャットアウトされがちであり、むしろ視野が偏ってしまうリスクもあります。

資格取得に向けて勉強すると、研究者の発見や先人が経験則的に得たたさまざまな知恵、フレームワークなどをバランスよく学ぶことができ視野が大きく広がります。

信頼をもってもらいやすくなる

営業マンは営業成績をあげる先輩を尊敬しますが、営業マネージャーには自分が困っている課題に対してサポートできるような知識や指導力を求めるものです。

根拠なく感覚や経験則でマネジメントをしていると、部下によっては不信感を持たれてしまうこともあるかも知れません。資格をもち専門知識に基づいた方法論、課題解決のためのフレームワークなどを教えることができると、部下から信頼されやすくなります。

社内の他部署と一緒にプロジェクトを組む時も、資格があることで意見に説得力が増します。上司も知識に基づいた発言をしていると受け止めてくれます。名刺に難関資格を記載することができれば、取引先からも一目おかれるでしょう。

キャリアアップにもつながる

ビジネスマンは、年齢を重ねるにつれ業務知識よりも「どれだけの人を動かせるか、まとめられるか」という能力を測られるようになります。 

昇進・昇格においても、経営層に近づくにつれマネジメントの資格を取得していることは強みなります。一般社員から営業マネージャーになる時は、実績主義のことが多いと思いますが、例えば部長→役員、役員→経営者に昇進するときの基準はまた異なるからです。

異動せず営業部門で成績をあげてきた方は、出世の途中まで速いものです。しかし、経営を任せるとなると、今度は経験職種の少なさが課題になることがあります。経営とは専門職でなく総合職だからです。

営業の世界しか知らない人よりも複数の部署を経験したり、子会社に出向し多様な経験をした人の方が、会社全体を任せるという意味では安心感があります。だからこそ、大手商社などは若いうちに子会社出向を経験させるのです。

昇進・昇格が速い人材は、一つ上のポジションの視点で仕事をすると言われます。難関のマネジメント資格を取得していれば、経営者視点で仕事をしていると判断され社内外問わずキャリアアップにつながる可能性が高くなるでしょう。

マネジメントの資格の紹介 

ここでは、営業マネージャーにお薦めのマネジメントの資格を紹介します。 

ビジネスマネジャー検定

ビジネスマネジャー検定

ビジネスマネジャー検定は、業種を問わず企業のマネージャーが身につけておくべき土台となるマネジメント知識を学べる、東京商工会議所の検定試験です。

学習カリキュラムの内容はマネジメントの基礎知識、経営・事業計画の策定に役立つ戦略論、フレームワーク、コーチング、EQ理論、部下評価のポイント、損益計算書の基本、マーケティング、リスクマネジメント、企業の安全配慮義務ほか幅広く、ビジネスマンに必要な分野をほぼカバーしています。

公式テキスト公式問題集も販売されています。ビジネスマネジャー検定試験に向けて勉強することで、幅広い知識を短期間に効率的に身につける効果が期待できます。試験費用も数千円であり、内容の濃さを考えればマネジメント系資格の中で破格だと言えるでしょう。

プロジェクトマネジメント資格(PMP) 

プロジェクトマネジメント資格

PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)とは、米国PMI本部が認定しているプロジェクトマネジメントに関する国際資格です。公的な資格ではありませんが、世界中で広く認知されている国際資格であり、取得すると国内外でプロジェクトマネジメントのプロフェショナルとして評価されます。

主にIT、モノづくりを含めたプロジェクトマネジメントに必要な知識・思考を体系化した資格ですが、業界問わずプロジェクトを成功させるための標準的な方法論、科学的に確立された手法、必要なスキルを身につけることができます。

試験資格があり、プロジェクトマネジメントの実務経験がある方のみが対象です。試験はプロジェクトマネジメントの方法論である「PMBOK」にそって出題されます。対策用テキストとして、「PMBOKガイドの日本語版」「プロジェクトマネジメント・ツールボックス」などが発行されています。試験は日本語で受講可能であり、受講料は555ドル(約6万円)です。

メンタルヘルス・マネジメント検定

メンタルヘルス・マネジメント検定

メンタルヘルス・マネジメント検定も、これからの時代にお薦めの資格です。近年は世界的にうつ病が増加しています。もちろん、日本も同じ状況です。密度の濃い仕事をしている現代のビジネスマンはストレスがかかりやすく、その中でも数字を背負っている営業マンは、よりストレスがかかりやすい環境にいると言えます。

チームメンバーが心身の健康を保ちながら最大のパフォーマンスをあげるためには、営業マネージャーがメンタルヘルスの基本知識を持っていることが大切です。

メンタルの不調は誰でもなる可能性があります。元気に見えた営業マンがある日メンタル不調に陥ってしまうこともあり、困ったことに本人すら深刻な状態になるまで気付かないことすらあります。

営業マネージャーは日々部下とコミュニケーションをとりながら勤怠の乱れ、顔色、長時間労働などに気を配る必要がありますが、メンタルヘルスの知識がないと、部下の異変に気付かないリスクがあります。昨今は部下の不調について管理職責任を問われることもあるため、メンタルヘルスの基本知識を学んでおくことはこれからの管理職には必須だと言えるでしょう。

メンタルヘルス・マネジメント資格にはⅠ種(マスターコース)、 Ⅱ種(ラインケアコース) 、 Ⅲ種(セルフケアコース)の3種類あります。営業マネージャーであればⅡ種かⅢ種を取得することが望ましいと言えます。運営団体の大阪商工会議所から公式テキストが販売されています。受験料はコースによって違いますが4,000~10,000円の範囲です。

MBA(Master of Business Administration)

MBAは日本語では「経営学修士号」または「経営管理修士号」と呼ばれる学位です。資格ではなく学位なのでテストを受けて取得するのではなく、経営学の大学院修士課程を修了する必要があります。

MBAと言えば昔は海外留学がスタンダードでしたが、近年はフルタイムの国内MBA、土日や夜間に通学しながら取得できる国内MBAオンラインMBA(海外・国内)もあります。

期間は各経営大学院によって異なりますが、1~2年間のコースが一般的です。授業ではマーケティング、財務、経済学、ビジネスプラン、会計、経営戦略、人事戦略ほか大量の経営に関わる科目を学びます。課題が多くディスカッション形式の授業で揉まれるため、ロジカルで実践的な問題解決能力が身につくと同時に、人脈形成につながるところがメリットです。

MBAは学費が高く、オンラインMBAでも2年間で200~400万円ほどかかるコースが多いのですが教育訓練給付金制度専門実践教育訓練給付金)の対象になっている国内大学院を選べば、受講費用の最大70%(年間上限56万円)が最大3年間支給され、およそ半額をコストダウンできる場合もあります。

(授業料の目安)  

  • 海外MBA(留学)        200~800万円/年
  • 国内MBA(平日通学)  100~350万円/年
  • 国内MBA(土日・夜間)   52~300万円/年
  • オンラインMBA(国内外)100~200万円/年

※各経営大学院によりカリキュラム・授業料は異なります

MBAについては「コモディティ化してきた」「昔より価値が低下している」「もはやエリートではない」という意見も増えていますが、逆に言えば、MBAで学ぶような知識が、ビジネスマンにとって基本知識に近づいてきたということでもあります。学ぶ価値は十分にあると言えるでしょう。

中小企業診断士

中小企業診断士

中小企業診断士はビジネスマンに人気の資格です。2016年の日本経済新聞の調査では、ビジネスパーソンが新たに取得したい資格 第1位に輝いています。中小企業診断士は日本において唯一の経営コンサルタントの国家資格です。日本版MBAと呼ばれることもあります。

中小企業診断士の資格をとると企業経営に関わる幅広い知識、経営戦略、マーケティング、財務・会計、法務、人事、製品管理、ITなどに関する知識を横断的に身につけることができます。営業マネージャーにとってもお薦めです。

1次試験と2次試験があり、1次試験の内容は経済学・経済政策、財務・会計、企業経営、運営管理(オペレーション・マネジメント)、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策の7科目です。公式問題集は出ていませんが、科目ごとの過去問題集が発売されています。受験料は1次試験が13,000円、2次試験が17,200円です。

ビジネス会計検定(財務諸表理解力検定)

ビジネス会計検定

数字はビジネスの共通言語です。ビジネス会計検定は、財務諸表に関する知識や分析力を測る資格であり、経営にも営業にも役立つ会計知識を身につけることができます。

1級~3級まであり、3級は財務諸表としての貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書に記載されている項目と計算構造を学ぶことで、企業の成長力、支払い能力、株価の適正さなどを把握できる能力が身につきます。

1~2級になると財務諸表分析、キャッシュ・フローや企業の採算性を探る損益分岐点分析ほか、財務諸表を含む会計情報を総合的に分析して企業評価できる力を身につけることができます。

営業で企業を新規訪問したり契約するにあたり、お客様の財務諸表から成長性や課題、経営方針、重点をおいている商品・サービスなどがわかるようになるので、商談時の話題の選び方や提案内容もより的確になるでしょう。

また、自社の財務諸表を分析することで課題やリスクを発見することもできるようになります。受験料も4000円~10000円と比較的低価格です。運営団体の大阪商工会議所から公式テキスト公式過去問題集が発行されています。

マネジメントの資格の学びを実務に落とし込むためには

マネジメントの資格取得を通して得た知識を実務に落とし込むには、意識的に実践で活用していくことが大切です。例えば、お客様を分析するときに財務諸表を参考にしたり、新たなフレームワークを用いたりすることを試みたり、EQ理論やチームビルディングの知識を基にチーム編成を考えたりすることができます。

実際の現場は、資格のテキストよりはるかに複雑です。取引先によっては派閥などの人間関係や感情なども絡んできて、ロジカルシンキングが通用しないこともあるでしょう。正しい知識と方法論、これまでの成功事例などを踏まえながらも、課題ごとの特殊性を理解してその都度最適な解決策を出す努力が必要です。

資格もMBAも何かの正解というよりは、最適解を出すための強力なツールという位置づけで考えることが大切です。資格を取得したあとは実践で応用を繰り返し、知識を自分の武器に変えていきましょう。

まとめ

日本は一昔前までは、社内の業務知識を身につけていくだけで、ある程度出世できる時代でした。今のようにビジネス環境の変化も速くなかったため、若い頃の現場知識だけでもマネジメントがある程度できたからです。

しかし、これからの時代、現場の業務知識はすぐコモディティ化します。誰もが定期的に「学びなおし」を求められる大変な時代になっています。

その中でマネジメントに関する知識やスキルは、時代の変化にあまり左右されない企業経営における核の部分の知識だと言えます。マネジメントの資格を取得することは営業マネージャーの仕事だけでなく、将来のキャリアのさまざまな場面でプラスに働くでしょう。

営業スキルチェックシート」では、自身の営業スキルを確認することができます。資格取得の前に自分の得意・不得意を検証するツールとしてお役立てください。

    営業スキルチェックシート

佐原 業平(さはら なりひら)

中央大学商学部を卒業後、2016年に新卒で株式会社コンベックスに入社。 新規開拓営業を経験した後、eBook・セミナー・研修のコンテンツの作成に従事。 そこで培った営業とマーケティングの知見を生かし、「セールスハックス」の運営に取り組む。 経営者から営業マンまで、ビジネス現場を理解したお役に立てる情報を発信。

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