商談でも使える「損失回避のメリット」とは?

損失回避 メリット

営業マンとして、自社商品によってもたらされる利益やメリットを伝えるのは重要なことです。
しかし、ただ単に商品を買うことで得られる利益やプラスのメリットを伝えるだけでは、見込み客は聞き慣れてしまっていて、行動に結びつかないケースもあるかもしれません。
そのような時でも行動につなげたい時に使える伝え方があります。
今回ご紹介するメリットは「損失回避のメリット」です。

損失回避のメリットとは?

ダニエル・カールマンが1979年にプロスペクト理論、価値関数グラフを用いて、人は利益よりも損失の方が約2倍重く感じると発表しました。
同等の利益と損失では、損失をより大きく評価し、損失を避けようとする心理的傾向を損失回避性と言います。
つまり、「人は、何かを得ることよりも、失うことに対しての方が大きな恐怖心をもつ」ということです。
将来得られるかもしれない不確実性のある利益よりも、今の損失や苦痛から逃れられる確実性の方が、人は強く影響を受けます。

損失回避のメリットの具体例

テレビショッピングにおける損失回避のメリット

テレビショッピングで「今回8時までにお申し込みいただいた方には分割手数料無料!」とメリットを伝えた後
プラスのメリット:「この機会をぜひご利用ください」
損失回避のメリット:「この機会をお見逃しなく」

Webマーケティング会社の営業マンにおける損失回避のメリット

プラスのメリット:「検索結果、上位3位になると売り上げが上がるんですよ!」
損失回避のメリット:「検索結果での表示が3位以内の会社の1日の売り上げが、推定100万円なんですね。御社も3位に入っていれば、それだけ売り上げを上げられると考えると、もったいないですよね。」

太陽光発電の営業マンにおける損失回避のメリット

プラスのメリット:「光熱費1万円節約できますよ」
損失回避のメリット:「今までも、これからも毎月光熱費を1万円失い続けるとするともったいないかもしれませんね」

同じ話を提案したものの、行動に結びつくのか、結びつかないのか、損失を回避したいという心理の方が行動に結びつきことを知っていれば伝える内容も変わってきます。
はじめは、プラスのメリットから伝えて、響かなかったら損失回避のメリットを伝えてみましょう。
このような人間の心理や行動原理を知っておくことで、マネジメントに活かすこともできます。
事例の一つとして2012年にシカゴ大学が非常に興味深い実験結果を公表しています。
「教師に対する報酬を与える方法が、生徒の成績にどのような影響を及ぼすのか」というものです。
ランダムに二つのグループに分けられた計150名の教師が実験に参加しました。
1つ目のグループの教師たちは、1年間の学期が始まる前に、報酬を先払いで渡され、もし生徒の成績が悪ければ、成績のレベルに応じて、受け取った報酬を返さなければいけないという条件を提示されています。
一方で2つ目のグループの教師たちは、1年間の生徒の成績の向上具合に応じて、報酬をもらえるという条件です。
この実験の結果はまさに損失回避性の影響を受ける結果となったのです。
報酬が後払いだった教師のグループの生徒たちの成績がそれほど変化が見られなかったのに対して、報酬が先払いだった教師の生徒は、10%ほど成績が向上したのです。
報酬を先払いで受け取っていたため、「この報酬を失ってしまうかもしれない」という恐怖心からこのような結果が表れたのだと考えられます。
マネジメント方法のひとつの可能性として活用していただければ幸いです。

損失回避のメリットのポイント

さまざま事例も紹介して参りましたが、損失回避のメリットを伝える際に、そのまま伝えてしまうと人間の失ってしまうという危機感を刺激しているため、見込み客の反発心を招いてしまうこともあるかもしれません。
ですので、なるべくお客様に寄り添うような言い方がポイントになります。
例えば、こちらの主観的な提案ではなく客観的なデータから事実を述べていることを伝える(これまでの統計データ、実際の成功事例や失敗事例)、1つの表現としてあえて「◯◯かもしれませんね」という決めつけない表現をすることです。
突きつけ、脅すような形になってしまうと逆効果になります。

今回は、損失回避のメリットについてお伝えしました。
相手の認識をはじめから否定せず、恐怖心をあおるよりも「もったいないですよね」という姿勢が効果的です。
励ましと寄り添う気持ちをセットにしましょう。

参考文献: THE UNIVERSITY OF CHICAGO「Student performance improves when teachers given incentives upfront

    営業スキルチェックシート

原誠

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